★過去のお礼小説〜★

□〜“このままずっと……”〜(クリスマス版ミニ小説の続き)
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∞∞〜過去のお礼文〜∞∞
このままずっと……(クリスマス版ミニ小説の続き)
{あたしが望んだ夢}





いつもリディアを抱きしめる、力強い腕。
彼女の髪にそっと触れる、細長い指。
この屋敷には、彼はいないはずなのに、懐かしい匂いがする。

「エドガー?」

頭をゆっくりと起こし、隣りに寝ていたはずのニコが、エドガーに変わっていた。
どうしてエドガーがここにいるのだろうと、そんな疑問も思わずに、彼の頬に手を添えてリディアは、耳元へ囁いた。

「エドガー、早く起きて。今日はクリスマスツリーの飾り付け、一緒にする約束だったでしょう」
「う……ん、もう少し、だ……け」

彼の頬に添えていたリディアの手は、エドガーの手がそのまま重ねられた。
まだ、起きる気配がない。
リディアは彼の手を、強くひねった。
いたっと、声が聞こえてやっと起きてくれた。

「おはよう、エドガー」

リディアはとびきりの笑顔で、挨拶をする。

「おはよう、僕の妖精」

リディアの頬に、唇が触れる。
いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない、彼の行動。
どうしてエドガーの苦しみをもっと、分かってあげられなかったのだろう?
リディアはそんな幸せな2人を、遠くから眺めていた。
これは、今のあたしが望んでいること。
そう、夢を見ているだけだから……。
目が覚めれば、エドガーのいない現実が待っているだけなのだ。




       ×     ×     ×     ×     ×     ×     ×




「リディア、下の方の飾り付け終わった?」
「ええ、こっちの方は終わったけど、エドガーの方は?」

あれっ?
あたし今、ツリーの飾り付けしている……。
さっきまで遠くから眺めているリディアだったが今は、ケリーも一緒に3人でクリスマスツリーの飾り付けをしていた。

「僕の方は、この靴下をつければ終わりだから」

今はしごに登って、ツリーの飾り付けをしているエドガーを、リディアはこれが、夢か現実か分からないまま、下の方から眺めていた。

「あたしロンドンに来てから、初めてのクリスマスを迎えますから、今から楽しみになってきましたわ。伯爵邸のクリスマスパーティーってどんなのかしら?」

ケリーはクリスマスパーティーのことを、想像しているのだろう。
鼻歌を歌いはじめた。

「僕の楽しみは、クリスマスパーティーが、終わってからか……な」

はしごから降りてきたエドガーは、後ろからリディアの首に両腕をまわす。
リディアの頬には彼の息がかかり、それだけでもドキドキする。
でもなんとか心を落ち着かせて、平常心を保たせ口を開く。

「……どうして?」
「2人っきりの時にきみに、プレゼントを渡したいから」

今度は頬から唇に、息がかかる。
ケリーがいるのに……と、思いながらも、唇が重なりあっていた。
幸せすぎて、これが夢じゃないのか?
おそるおそる、エドガーに聞いてみた。

「……ねえ、これは……あたしが見ている夢の中の出来事なの?」

これが夢じゃないことを、願いたい。

「リディア、どうしてそんなこと、聞くの?」

エドガーは笑顔でリディアに話す。
そんな彼の表情を見て、ほっとする。
よかっ……た。
現実だったんだ。
ケリーの表情も笑顔だが、でも、まわりがぼやけてくる。

「そうですわ、奥様。そんなことを聞かなくてもこれは、夢に決まっているのですから」
「そうだよ。それにこれは、きみが望んでいた夢なんだろ?僕達はただ、きみの夢の中に出てきただけだよ」

確かに、エドガーさえいればと。
せめて夢の中だけでも彼に逢えればいいのにとも、思った。
クリスマスツリーに飾られたロウソクに火が、つけられた。
でもそれすらも今のリディアには、消えかけているように見える。
エドガーとケリーが、少しずつ遠くなっていく。
夢から目覚めてしまう!




          ×      ×      ×     ×    ×    ×    ×


時計の方に目を向けると、お昼近くになっていた。

「やだ……、あたしったら、こんな時間になるまで起きなかったのね」

今寝室には、リディア以外には誰もいない。
この寝室は1人では広すぎる。
また、彼のいない1日がはじまる。
リディアは着替えをするために、ケリーを呼ぶ。
すぐさま彼女はやって来た。
いつもながら来るのが、早い。

「おはようございます。足の方おもみしますので、ソファにお座り下さい」

彼女はすでに準備にとりかかっていた。

「あっ……足の方は今日はいいわ。大丈夫だから」

最近足がむくんで仕方がないことをケリーに話したら、朝と夜の2回マッサージしてくれると言ったが。
いくら侍女といっても、そこまでしてもらうのは悪いのでリディアはケリーに断ったのだが。
でも彼女はさっさとマッサージを、はじめてしまっていたのだ。

「奥様、遠慮はいりませんから。つらい時には言って下さいね」

リディアの考えていることを分かっているためにケリーは、さりげなく言ってくれたのだろう。
でもリディアは彼女に、結構甘えているつもりだ。
ケリー以外の侍女はリディアには、考えられないから。

「ありがとう。その時はちゃんと言うわ」

着替えを済ませて部屋を出た時、リディアは昨日ケリーが、郵便物の確認をしてほしいと言われたことを思い出した。

「ねえケリー、先に昨日届いた郵便物の確認をしたいんだけど、いいかしら?」
「かしこまりました。それではダイニングルームへ運ぶように、伝えておきますね」
「ええ、お願いするわ」
「でも住所も宛名もない郵便物がクリスマスに届くなんて、なんだかロマンチックですわね」
「本当ね。中身は何かしら……ね?」

リディアとケリーの2人は、誰に届いた郵便物なのかまだ分からないのに、まるで自分に届いたプレゼントのように、中身がなんなのか?
楽しそうに話しをしていた。




                  
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