★過去のお礼小説〜★
□〜“現代版伯妖”〜(クリスマス版ミニ小説)
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∞〜過去のお礼文〜∞
〜現代版伯妖〜(クリスマス版ミニ小説)
{クリスマス前の恋人達〜前編〜}
「そういえばリディア。今年のクリスマスはエドガーも招待したんだろ」
リディアは昨日からずっと、考えていた。
この前生理がきたのは、たし……か先月入ってすぐだったから……。
リディアは今まで遅れたことがなかったから、余計に不安になった。
「あ……それとも、エドガーの家に招待されているのかな?」
リディアが何も喋らないから、どうやら1人で勝手に話しを進めているみたいだ。
でも今のリディアはそれどころではなかった。
生理なんてうっとうしいと思っていたのに、今は反対にきてほしいぐらいだ。
こんなにも不安になるなんて。
妊娠検査薬を使えばすぐに分かることなのに。
それが出来ない。
もし、陽性反応が出たらと思うと、それが怖くて買いに行けない。
赤ん坊が嫌いと、言うわけではない。
いつかは自分も結婚したら、子供は2人ぐらい出来たらいいなとは思う。
子供がいれば、家庭は楽しくなるはずだから。
だが今はまだ、その時期ではない。
まだ高校生のリディアには、やりたいことが山ほどある。
それは彼だって同じことだと思う。
コーヒーカップを口に付けている父をちらっと見る。
もし妊娠していたら。
そのことを父が知ったらと思うと。
「んっ?顔に何か、ついているのか?」
どうやら知らぬ間に、父の顔をじっと見ていたらしい。
「え、えっと……、あっ!そうそう。今日のコーヒーどうかな……と思って」
リディアは怪しまれたくないためなんとか、父に喋りかけた。
「いつもと同じだけど、違うのか?」
一口飲んで少し、考え込んでいる。
いつもと一緒のコーヒーだから、味は一緒なのは当然だ。
「ううん、いつもと同じよ。じゃあ、あたし今日ロタと約束があるから」
「あ、ああ……いってらっしゃい」
少し不思議そうな顔をリディアに向けながらも、新聞を読み始めた。
親不孝な娘でごめんね。
リディアは心の中で父に謝った。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
今日のロタは気分爽快みたいで、鼻歌を歌いながらオーブンから焼きたてのクッキーを取り出していた。
多分、昨日の生理痛から解放されたのだろう。
「今日はポールが来るから思わず、作っちゃったよ」
ポールが来るのがよっぽど嬉しいのか。
にやにやしながら焼けたクッキーを眺めている。
リディアはまかさとは思いながらも、ロタに聞いてみた。
「ひょっ……として、エドガーも来る」
「ああ、もちろん。リディアが家に来るって言ったら、あいつすぐOKしたよ」
リディアは焦った。
どんな顔してエドガーに逢えばいいのよ!
そんなリディアの悩みとは裏腹に、今のロタはポールのことしか頭にないらしく、また再び鼻歌を歌い始めた。
「ロタごめん、あたし帰るわ」
リディアが玄関にすたすたと向かって行ったので、ロタが慌てて走って来た。
「ちょっ……ちょっと待てよ!急にどうしたんだ?」
ロタに肩をつかまれてようやく立ち止まり、リディアは自分の悩みを口に出した。
「……全然こないのよ。こんなこと初めてだし。かと言って、買いに行く勇気もないしどうしよう……」
リディアはその場でぺたんと、床に座り込んでしまった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「もちろん、あいつはちゃんとしてたんだろ?」
「たぶ……ん」
「多分……って、リディア確認してなかったのか」
ロタが溜め息まじりの声を出す。
ちゃんと確認をしていなかった自分が悪いのだから。
でも……。
「はじめはしてたわ。でも……段々と回数を重ねていくと、その……あたしも彼がしてるのが当たり前だと思っちゃって、ほら!そういう雰囲気になったらそんなことって、考えられなくなっちゃうじゃない」
「じゃないっ……て、あんたはそういうことに感してはもっと、ちゃんとしていると思ったけど」
「……」
何も言い返せなかった。
全部エドガー任せだった自分に今は、後悔している。
ロタはどうなのか気になったので、ちょっと聞いてみることにした。
「ロタは?ポールとする時は彼任せじゃないの?」
その質問にロタは小さな声でぼそりと、喋った。
「……まだ、なんだ」
意外だった。
ひょっとしたらまだ2人は、恋人未満の関係なのだろうか。
先程のロタと違い何も喋らなくなった。
どうしよう……。
とその時、後ろからリディアはぎゅっと、抱きしめられる。
振り向かなくても、リディアにはすぐにわかる。
「リディアお待たせ、待った?」
そしてリディアが振り向くと、いつもの軽いキスが始まる。
やがてそれだけでは終わらず、深く深くとお互いの気持ちが入り込み、もはやリディアは平然と座っていられない状態へとなる。
一応エドガーは場所を選でやってはくれているが、最初の頃は軽いキスさえ恥ずかしかった。
でも今は、これが2人の間では当然のようになっていた。
「はいはい、そこまで」
ロタの手が叩く音が聞こえた。
その声にリディアは唇を離そうとするが、エドガーが離してくれない。
結局彼の胸板を両手で強く押して、それでなんとか終わらせてはくれた。
「まったく……、いっつもいっつもよく、あきずにやるよ。それよりもポールは?」
エドガーが来たことで、いつものロタに戻ったみたいだ。
さっきの落ち込んだロタをエドガーは知らないみたいで、いつもの通り喋りかけた。
「先に行っててくれってメールが入ったから、先に来たけど」
キスは止めてくれたけど彼の手だけは、リディアの腰に回したままだ。
よかった。
さっきの話しが聞かれていないことにリディアは、ほっとした。
「じゃあ、あたしは飲み物の準備してくるから」
やれやれと言ってロタが部屋から出て行く時、目でリディアに合図を送った。
その意味を理解したリディアは頷く。
「ロタもたまには気が利くな」
何も知らないエドガーは、リディアに笑みを浮かべた。
彼の唇が再びリディアに近付いた時、思いきって口を開く。
「……エドガー。実はあたし……」
妊娠したかもしれないって言ったら、あなたはどんな表情を浮かべる?
リディアが喋るのを止めたため、また2人は唇を重ねた。