★過去のお礼小説〜★

□〜“現代版伯妖”〜(ミニ小説)
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∞〜過去のお礼文〜∞
〜現代版伯妖〜(ミニ小説)
{クリスマスの過ごし方〜スイート編〜}



                 
「ねえ、リディア……」

今リディアの隣に座っている、金髪の青年の顔がすっと、唇に近付く。
リディアは何の迷いもなく自然と目を閉じ、彼の唇を受け止める。
付き合い始めの頃は、彼の顔が近付いてくるだけでも恥ずかしく、リディアはすぐに下を向いた。
そのたびにエドガーによく、顎に指を添えて顔を上に向けさせられた。
そしてすぐに口付けられるものだから、目を閉じる暇さえなかった。
リディアにはそれが精一杯だった。
たぶん彼には物足りなかっただろう。
でもエドガーはリディアには強制しなかった。
時間をかけてゆっくりと、愛しあえばいいと。
そう言ってくれた。
だからリディアは逃げ出さないですんだのだ。
スコットランドの時とは全然違う。
エドガーの優しさが、リディアを包み込んでいく。
彼とはゆっくりと時間をかけて愛しあい、今ではこうやって体を委ねることさえできる。

「……んっ、」

キスのあいまにでる甘美な声。
今では彼に触れない日なんて考えられない。
リディアの首に巻き付けているケープがはずされ、彼の唇がそこに近付くと、強く吸われる。

「あっ……」

リディアのその色気のおびた声を聞いたエドガーは満足したのか。
笑みを浮かべる。
お互いに目があった時、リディアの方から口を開く。

「エドガー、あの……ね」
「ん、何?」

ベッドの上に座っていた2人は、そのままゆっくりと倒れ込む。
横を振り向けば、リディアを愛しくみつめる彼の表情が目にはいり、愛しさが込み上げてくる。

「あた……し、あたし、あなたが……好き」

彼からいつも言ってもらうだけじゃなく、あたしからも言おう。
そう思ったのはつい最近のこと。

「僕も、愛しているよ」

エドガーみたいに、たくさんの愛の言葉は出てこないがそれでも彼は、はじける笑顔をリディアに向ける。
そしてまた再び、愛しているよと、囁いてくれる。
エドガーの手が、リディアの着ているパーティードレスの肩紐をずらしかけた時、彼の胸板を押す。
リディアのその制止に、エドガーは眉をひそめた。

「今日は拒否するの?」
「違うわ……、今はクリスマスパーティーの途中よ。お客様だって来てるんだから、こういうのは……、お客様が帰った後のほうが……」
「いつ帰るの?」
「え……と、それは……」

そんなのすぐに帰らないのは、わかりきっていること。
わざと、リディアを困らす質問をするエドガー。
リディアが悩んでいると、悪戯な笑みを浮かべたエドガーがそっと、耳たぶに彼の唇が当てられた。

「もう少しだけ……」
「……うん」

下へ降りなきゃと思っていても結局、エドガーの言葉の言う通りになる。
今リディアの部屋の明かりは、ベッドサイドにある光だけ。
今彼はリディアに覆い被さっているから、明かりはエドガーの金髪の髪に薄暗くしか照らされていないが、それでも綺麗な髪には変わりはない。
先程から下の階からは、笑い声や喋り声がこの部屋にも微かに響いている。
それでも今のこの2人には、目の前にいる相手のこの息づかいしか耳に入ってきていない。

「リディア……やっぱり、無理かも……」
「エドガー、あっ……」

エドガーの手が腰の下を滑り落ちている。
もうリディアはその手を、払いのけようとも思わなかった。
リディアも同じ気持ちだから。
パーティーになんか戻らないで、このまま彼と一緒に過ごしてもいいんじゃないかと思う。
そう、このまま……。
頭の中がとろんとして、ため息混じりの声を漏らしている時。

「2人とも、そこにいるんだろ?話があるから出てきなさい」

ドアの向こうからノックと同時に、厳しい声が聞こえた。
その声とともに2人の動きがぴたっと、止まった。
聞き覚えのある声。
考えるまでもない。
リディアが小さい時から馴染みの声。
父だった。


                                               
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