★過去のお礼小説〜★

□〜“このままずっと……”〜(クリスマス版ミニ小説)
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∞∞〜拍手お礼文〜∞∞
このままずっと……(クリスマス版ミニ小説)
{きみがいないクリスマスー前編ー}





「今夜は、寒くなりそうだな……」

馬車の窓から見える外の景色は、ひらひらと雪が降り始めていた。

「それにしてもエドガー様が、教会に通うなんて、驚きましたわ」

誰もが一瞬で虜にしてしまう美貌の青年が、向かいの席に座っている、白く透き通った肌の女性にふっと、笑みをもらす。

「意外に思っている?僕だって、信仰心はあるんだよ」

リディアの影響で通っていた日曜の礼拝が、今となっては習慣になっていた。
この時期が近付くと、外はクリスマス一色に染まるから、いやでも目につく。
でもエドガーはこの風景を見るのは、嫌いではなかった。
今年こそは彼女と一緒に見ようと思ったけど、その願いは無理だったみたいだ。
いや、自分からリディアのそばから離れたのだから、一緒にいたいと願う方が贅沢なのかもしれない。

「ところでアーミン、クリスマスの日は僕と一緒に過ごしてくれるの?」
「他に予定もございませんから……」

エドガーのこんな言葉にもアーミンは、平然と答える。
リディアならたぶん、頬を赤く染めながら喋るんだろうな。
頬づえをつきながらぼんやり、外を眺めていると、雪合戦をしている子供達にふっと、笑みをこぼしてしまう。
そんなエドガーの様子に、気がついたのか。

「エドガー様、楽しそうですわね」
「う……ん、まあね」

曖昧な返事だが、別に彼女は、気にする様子もない。
彼がロンドンから離れて移り住んだこの町は、あまり道の舗装がされていないせいか。
先ほどから馬車の揺れが激しい。
やがてその揺れがおさまり、一軒の店の前に馬車は止まった。

「エドガー様?」
「ああ、しばらく馬車で待っててくれる。買いたいものがあるから」

彼女はそれ以上のことは何も、エドガーには聞かず、行ってらっしゃいませとだけ言って、頭を下げる。
エドガーは1人で、その店の中に入って行った。




       ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×




クリスマスの当日、朝からパーティーの準備のため、みんな大忙しだ。
ここでのパーティーは、ロンドンにいた頃と違い、華やかさはないが、こういった気取らないパーティーもエドガーは、気に入っている。
アシェンバート伯爵邸では、たくさんの数の使用人が働いていたが、ここではわずかな人数の使用人が、いるだけだ。
でもさすがに今日は、パーティーの招待客の料理は、とても使用人だけでは無理があるため、近所の奥さん連中のご好意に甘えさせてもらい、朝から手伝いに来てもらった。
招待客のほとんどが、近所の人であるために、子供もたくさん参加をしている。

「今年のクリスマスは、賑やかですわね」

アーミンもどこか、楽しそうだ。
今日の参加者は、階級など関係なしのパーティーなので、こうして彼女も参加している。

「うん、本当だね」

クリスマスツリーの周りを、ぐるぐる走り回る子供達を見てエドガーは、リディアを思い出していた。
あの時の彼女の表情を今でも、はっきりと憶えている。
目の前にいるエドガーをまるで、別の知らない人を見るような感じでリディアはエドガーを見ていた。
エドガーの言った言葉が彼女を、傷つけてしまった。
あれ以来リディアは、エドガーの前には現れない。
リディアにとって、初めての上流階級のクリスマスだ。
今どんなクリスマスを、過ごしているのだろう。
こんな賑やかな状況の中でもエドガーは、リディアのことを思い出してしまう。
リディア、きみを傷つけてしまって、ごめんね……。                           







{きみがいないクリスマス}後編に続く→                                                                                                                       
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