長編

□序章、そして旅立ち…
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…―



怪しげな森の中で、和服を着た町娘のような外見の人物が岩の上に上品に座っている。手には血のついた毬…。
彼女の足下には、醜い獣がすがるようにウジャウジャといる。そこへ、怪しい男(?)が現れた。全身羽毛で覆われ、手はまるで鍵づめのよう。


「ほぼ、完了いたしました。」

男が言うと

「ご苦労様。」

と女が少女のような声で言う。


「しかし、人間をなぜ残して置くのです?全て化(カ)えてしまえばよろしいのに…。」

男が言うと、女がホホホと笑った。

「烏煙よ、そちは楽しみたくないのかい?」

「いえ…出来るならば。」
「そうじゃろう。そのためにとっておくのじゃ。それに…まさかとは思うが、鬼どもが来たときの対策にもなる。」

「なるほど…。そういうお考えでしたか…。この烏煙、気付かずとんだご無礼を。」

烏煙は頭を下げる。女は“よい”と言うふうに手を振った。

「念のためじゃ。見回りに行ってきてもらえぬか?」
「承知いたしました。」

烏煙は一礼し、去っていく。女は毬をそっと目線の先に持っていった。


「妹の敵じゃ、鬼どもよ…」



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