長編
□第四章、いざ四国へ
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森の中の洞窟のような所に、謎の集団が集まっていた。チャイナドレスに毛皮を肩から掛けた妖艶な女性、その女性と同じ顔だが中国人文学者のような服に知的な雰囲気の女性、全身を羽毛に包まれ鉤爪をもつ二人の青年、そして黒い着物を着て血の付着した鞠を手にした少女……。
「ひめさまっ☆もしかしてあたし達の出番?」
妖艶な女性がギャルのような口調で言う。
「……鬼どもがこちらに向かっておる。それほど時はかからんだろうな。」
少女が遠くをじっと見ると、知的な女性が微笑した。
「これは…手厚く歓迎してさしあげなければ。」
「そーそー。コテンパンにやっつけてやる!」
話に割って入ったのは、羽毛の青年の片方だ。
「こら!神鷹!」
あわててもう片方が止める。そんな様子を、少女は目を細めて見つめ続けていた。
「……喜媚」
「…は、はい?」
突然、少女が口を開いたため、知的な女性=喜媚は慌てて返事を返す。
「"奴"の動きを監視してくれ。」
「は、承知しました。」
少女はそれだけ言うと、虚な左目を押さえつつ、その場を立ち去った。
「おのれ鬼……おのれ雪姫……。」
少女は苦々しくそう吐き捨てた。
―一方、霧のかかる山頂―
こちらには、白い着物を着た少女を中心に、忍風の格好に左頬に刺青を持つ青年、侍風の格好に右頬に刺青を持つ青年、良家の若君風の格好に右額に刺青を持つ姫、僧兵風の格好に左額に刺青を持つ童子、そしてなぜか白い犬が従えている。
「鬼達が本土を出発、野菊姫も動き出した模様。」
忍風の青年が、状況を簡潔に述べる。
「どうする?俺達はいつでも戦える。」
今度は侍風の青年が頼もしくいい放った。
「我々は貴方に命を授かりし身。」
「貴方のためなら何なりと。」
姫と童子もそれぞれ逆転した声で言う。しかし、白い少女は首を縦に振らなかった。一同は動揺するが、少女は厳しい表情で言った。
「私がここで行かずとも、彼らは強い。安心しなさい。」
白い少女はその場を離れると、突然どこかを睨みつけた。
「懲りないようだな野菊姫。次は息の根をとめてやる…。」
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