長編
□第五章、讃岐…決戦の場所
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四国から少し離れた小島の砂浜で、野菊姫が珍しく鞠を持たずに海をじっと眺めていた。
「真白……お前はおろかだ。なぜ我が身を犠牲にしてまで人間に尽そうとしたのか……。わらわには分からぬ……。人間など、我等魔化魍にとっては餌に過ぎぬ。なぜそのような弱き存在を愛しようとしたのか。」
そう呟くと、すっと立ち上がる。
「まぁ、いい。お前の選択が間違いであったことを証明し、お前を殺した人間に……復讐しよう。必ず。」
ふと気が付くと、そんな野菊姫の背後に大きな影が現れた。野菊姫は怯むことなく、笑っている。
「よう来たな。人型魔化魍最大にして最強の存在……大魔化魍・ディダラボッチ。」
影=ディダラボッチは微かに笑うと、野菊姫に手を差し出した。
『力を貸す、女。』
「フフフ、恩にきるぞ……」
島には、しばらく野菊姫の笑い声が響いていた……。
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