長編
□最終章、未来の向こうへ…
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戦いを終えた翌日、崖の上にミナキが立っていた。手には巨大な数珠を持っている。
「安らかに眠れ……。すまなかった。」
ミナキはそう言うと、数珠を海へと投げ落とした。数珠は音もたてずに水面へ引き込まれ、静かに沈んでいった。ミナキが手を合わせている所に、ヒビキら本土の鬼がやってくる。
「ミナキ、俺達はそろそろ……」
「…そうか。帰るか…。」
ミナキは立ち上がり、手を出す。
「ありがとうヒビキさん。あんた達のおかげで、この四国を守ることができた。皆、元に戻ったよ。もちろん、アイツもな。」
ミナキの見る先には、村の子供とじゃれあうカブキの姿が。
「こっちこそ。彼を助けてくれてありがとう。」
「そんな、大したことはしてねぇさ。」
微かに笑うミナキ。すると、遠くからコウキが大声をはりあげた。
「船来たでー!!」
「お、来たか?」
見ると、向こうから大きな船が近付いてきている。甲板で手を振っているのは、四国に来るときに世話になった船長だった。
「船長!元気だったんですか?」
イナナキが嫌味たっぷりに言うと、船長は苦笑いした。
「海の男がこれしきで倒れてたまるかい!」
辺りに笑いが起こる。
ヒビキ達は、改めてミナキ、ランキ、メイキ、コウキを見ると、頭を下げた。
「世話になった。」
「何のこっちゃないがよ〜。いつでも遊びに来てや。」
メイキが笑ってヒビキの手を握る。ヒビキも笑い返した。
一方、カブキは三年前の鬼達に睨まれていた。
「あん時はよくも……」
「わ、悪かったよ!もうやらねぇから……許してくれよ。な。」
「一発殴らせェ。それで気が晴れる……」
「ヒビキが許しても、俺達が許さん。」
詰め寄られ、タジタジのカブキを見たミナキは、甲高い声で笑った。
「いっちょ反省してこい。明日夢くん、そいつを頼むよ。」
「え、僕ですか!?」
驚く明日夢。しかし、すぐに頷いた。
「分かりました。」
その時、船長が叫んだ。
「おーい、そろそろ出るぞ!乗った乗った!」
それを聞いた本土の鬼達は、慌てて船に乗り込む。
「ホントにありがとう!」
「また来るよ!」
「じゃあな!」
口々に叫ぶ本土の鬼達に、四国の鬼達は大きく手を振った。
「また来いよ〜!」
「気を付けてな!」
船はゆっくりと進んで行く……
そして、鬼達は四国の地を後にした……。
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