東方幻想狩り
□二次狩り
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「……くだらないな」
初老の男は一言呟くと、ゆっくりとこちらに向かって歩きだした。
「なんだと!!」
俺は声を荒げた。
自分の能力によって動きを止めたはずの初老の男が何事も無かったように動きだしたのだから当然だろう。
「くっ……《止まれ》、《止まれ》!!」
俺はまた初老の男に向かって大声で言い放つ。しかし、男は止まることなく着実に距離を縮めてきている。
「ばかな……何で俺の能力が効かないんだ……」
そう言いながら後退りをする。
いっそ背を向けて走り去れば……という考えが頭をよぎったその時、背中に何がぶつかったような痛みを感じる。
ここは迷いの竹林。
という事はぶつかったのは竹だろうが、完全に焦っていた俺はぶつかったモノを確認する為に、初老の男から目を放して後ろを向いてしまった。
勿論、ぶつかったのは竹であった。
「う……あ…………」
その直後、胸の辺りに激しい痛みが走った。
視点を戻すと、初老の男は既に自分の目の前に存在していた。
初老の男の手には槍が握られており、その先を目で辿ると穂先の少し前が自分の胸に刺さっているのが見える。
「おま……え……は……」
「………………」
初老の男を月明かりが照らす。
その胸には『運営』という文字が冷たく輝いていた。
「がはっ」
初老の男が槍を引き抜く。
もうすでに俺の体には力が入らず、落とした荷物と同じように冷たい地面に落ちていった。