ぜろ部屋

□じゅんびだいじに
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それから、その金ぴかとやらの放った宝具が単一でなかったことをウェイバーに聞き、ライダーはそれは特に驚くことではないと判断した。
『宝具』とはその英霊が持つとりわけ有名な故事や逸話をもとにした場合が多く『ひとつの宝具』が必ずしもひとつの武器の形を取っているワケではないからだ。


「あの、ライダーさん」

「ん?」


そんな話を聞いていて、澪はふと思った疑問をライダーにぶつけてみた。


「英霊って、ひとつのクラスにひとりだけなんですか?」

「基本的にはそうであろうな。嬢のランサーや余がそうであるように」

「なんだ、なんか気になってるのか?」


澪はひとつ頷いて、ウェイバーの方を向いた。


「うん、あっさりしすぎじゃないかと思って」


澪の中での聖杯戦争は、もっと英霊ひとりひとりのレベルが高いものだという認識があった。
それをまだ本格化していないように思える状況で、犬死にとも取れるあっさりとした結末にどうも納得がいかないのだ。


「確か『気配遮断』がアサシンの固有スキルってウェイバー言ってたよね。そんなアサシンが闇討ちもしないでこんなサクッと殺られちゃうってなんか、変だなって」

「そりゃ、固有スキルも生かせないマスターだったってことだろ。別に変じゃない」


さらりとウェイバーが言ってのけ、澪としても単なる違和感をこれ以上追求するだけの材料を持っていなかった。


「そんなもん、かな?」


だから、そう言って納得するしかない。ウェイバーが色々侮っている感じもあったのだが、それを突いて嵐のように反論されるのもわりとめんどくさかった。


「……あ」


そこで何かに引かれるようにふ、と澪の首が真横に動いた。
少し視線を彷徨わせてから荷物を入れながら立ち上がる。


「ゴメンウェイバー、僕帰るね」


手早く荷物をまとめ、座っていたクッションをウェイバーに返しながら苦笑して。


「ランサーさんが外で待ってるって」


それは、なんだか過保護な兄に対する妹のような様子だった。


「……アイツ、ランサーのどこが不満なんだ?」


窓の外、小走りに帰路につく澪を横目で見ながらウェイバーはぽつりと呟いた。
文句も反抗もせずに付き従っているランサーのどこに不平があるのか、ウェイバーには到底理解が及ばなかった。

やっぱり贅沢すぎんだろ、という感想しか出てこない中で同じく窓の外を見ていたライダーが顎に当てていた手をひらりと宙で振った。


「嬢とランサーの気質を考えりゃ、そら合わんのも道理であろうな。もっとも、あのランサーはそれに気付いちゃおらんだろうが」

「?それ、どういうことだよ」


ウェイバーにしてみれば、澪の気質を会ってさほど経っていないライダーの方が理解しているとは思えない。
しかしそんなウェイバーの思考とは裏腹に、ライダーはほんの少し眉根を寄せた。そしてそのままウェイバーの頭をぽんぽん。


「ッおい!」

「……たまぁにおるのだ、ああいう目つきの者は」


おそらくは澪に向けて、どこか哀れむような声音で。


「生来のもんだ。そうそう変えられぬよ」


宥めるような口調でも、ウェイバーは胡乱な目つきで見上げるだけだ。


「……答えになってないぞ、それ」




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