ぜろ部屋

□小ネタ集
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※HELLSINGとのクロスオーバー。

※ネタ帳にあったもし夢主の鯖が少佐だったら、というif話です。



Fate/Zeroねた.ver世界の敵



「初めまして、愛らしいお嬢さん(フロイライン)」


そう言って魔法陣の上、未だ燐光の残滓が残る中でただ独り、招請を受けた英霊である男はドイツ式の礼を取った。

たっぷりと脂肪の乗った身体に沿うよう誂えたらしい真白で固めたスーツと軍服の間のような服。
首から下がるネクタイのみが黒く、それが奇妙なアクセントのように見えた。

髪と同色の金の瞳が澪を品定めするかのように眼鏡の奥で細められ、その眼光に我知らず畏怖のような感情を覚える。
喉がひりつくような乾きを覚え、口に溜まっていた唾を無理に飲み下し、それでもひたと男を見据え、こちらもぺっこりと頭を下げた。


「初めまして。僕はあなたを求め、招いた者です」


声音から僅かな動揺を嗅ぎ取ったかのように男は満足げに嘆息し、更に言葉を紡いだ。


「死と生の間(あわい)に佇むお嬢さん(フロイライン)。君は私に何を求めるのかね」


口調のみは穏やかに、けれど彼は目的を糾す。


「私は――否、我々に何を求められようと、残念なことにできることはただひとつのみだよ」


そうして彼は、その言葉が心底愛おしいのだと言わんばかりにたった一言を紡ぎ出す。


「戦争だ」


ゆるりと手袋に覆われた短い指先が、動く。


「戦争の歓喜を味わうためにのみ、我々は動く。そのためにのみ、私は存在する。さぁ、お嬢さん(フロイライン)」


語る男の目つきが、彩りを帯びる。

ただ己の求める帰結のみを信奉し、求め、そのためにのみ突っ走る――それは狂信の徒の瞳に似ていた。


「聖杯戦争。戦争だ、素晴らしい。この場に私を導いた君は、恩人ですらある。だからこそ問おう」


そうして、狂気を纏い狂気に踊り狂喜を指揮する戦争屋の少佐は、自らを招いた少女に問いを投げた。


「この演台に私を導き、部隊を率いて、お嬢さん(フロイライン)は如何なる演目を選ぶのだね」


戦争の響きに身を震わせる狂信の徒に、澪は僅かな逡巡の後顔を上げ、口唇を開く。


「僕は――」




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