ぜろ部屋

□Chocolate-Box (Afternoon tea)
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※四次終了後のif設定です

※なんやかんやでウェイバーとくっつきました



「ウェイバーの馬鹿!もう知らない!」

「それはこっちの台詞だよ、バカぁ!」


思えば、こんなに子供っぽいケンカをしたのは始めてのことかもしれないと、ドアを叩きつけるように閉めながら思った。



Chocolate-Box (Afternoon tea)



ぴったりと閉じたドアにずるずるともたれかかり、膝を抱えて座り込む。
廊下でドタドタと乱暴な足音が聞こえたから、ウェイバーもどこかへ行ってしまったらしい。

でもそれでいい。今は会いたくない。


「ばか、ばか、ばーか」


こもった自室は電気もついてないから薄暗くて、自分の子供みたいな文句だけが響く。

腹が立っていた。変な言いがかりをつけて癇癪を起こすウェイバーなんてよくあることだけど、今回ばかりはむかついた。

ウェイバーの抱いた疑問は魔術師としてはまっとう……かもしれないが、そういう意味だとすれば口に出すのも馬鹿らしい、と分類される類だ。
でも澪が感じたのはそういう反駁とかではなく、ただ、そんなに自分には信用がないのだろうかと、悲しくなったのだ。

だから反論して、口論になって、ケンカした。

思い出したらムカついて、苛立ち紛れに本棚を拳でぶっ叩いた。痛い。なんだか無性にしょんぼりする。
眉が垂れ下がって、泣くなんて悔しすぎるから堪えた。


「僕、悪くないもん」


なのに、どうしてこんな気持ちにならなきゃいけないんだろう。


「ひどいや、ウェイバー」


膝に顔を埋めながら呟くと同時、頭にばさりと何かが覆い被さってきた。


「った!?」


慌てて手に取ってみると、一冊のノートだった。
どうやら本棚に適当に突っ込んでいたものが、さっきの八つ当たりでバランスを崩したらしい。
手持ち無沙汰に開いてみると、それは聖杯の構築システムについての忘備録だった。解析のためにウェイバーと二人でコツコツ進めているけれど、まだまだ空欄が多い。

ぺらぺらとめくっていると、ふと手が止まる。

そこに記されているのは、主に英霊の招喚システムについて。触媒を用いずに執り行われた招喚は、術者の精神性に依って聖杯が英霊を取捨選択するという。四次に限って言えばキャスター陣営だ。
その聖杯による選別と、サーヴァントの越境する時間についての考察が延々と書き連ねてあるのだけどまだまだ推論の域を出ない。


「……今度、衛宮さんに聞いてみたいな」


確か、彼は時間関係の魔術を囓っているらしいから、教えてくれるかは別にしても聞きに行くのもひとつの手だと思う。門前払いされる危険の方が高そうではあるが。
部屋を出てウェイバーと鉢合わせするのもイヤだし、現実逃避の意味も含めて澪はペンを取った。

少し考え、大きな空白に例の魔法陣を描いていく。どの部分に組み込まれているのかを推察しようと思ったのだ。


すると――


描き終えると同時、魔法陣からパシッと小さな火花が散った。
その火花が火口となったように、星屑めいた煌めきが同心円状に広がっていく。


「え、え?え!?」


硝子でできた砂が震え、鈴のような音が響かせればきっとこんな音だ。
そうとしか形容できない音律が耳の奥まで滑り込み、そのまま意識が遠のいて何もわからなくなった。




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