しょうせつ

□削げ墜ちた腕
1ページ/6ページ


ファントムが居なくなって、もう5年が過ぎた。
すっかり自分の居場所になってしまった共同墓地の中、群を抜いて立派な墓の傍らにペタはいた。
もうそろそろで夜が明ける。

ファントムがいつ甦っても良いように、と眠らないのを心がけていたら、いつの間にか眠れない躰になってしまった。

そういう事柄を改めて考える時、ペタは5年という大きな月日が巡った事を思い知らされるのだった。



果てもなく青い蒼窮が広がっていた。

地面に片腕を失ったファントムを転がして。

初めは、なかなか起きあがろうとしないファントムを、彼の冗談なのだと思っていたけれど、予想は外れていた。

戦場に着いた時、ファントムは本当に死んでしまっていた。

空も風も、総てがすがすがしく遠い青をしていた。

最悪の天気だと思った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ