しょうせつ
□削げ墜ちた腕
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不死の証を刻まれたファントムは、必ず甦る。
それはファントムの一番傍にいた自分が一番良く判っていたけれど、それでも、
たとえ一時の事であったとしてもファントムの姿は消えてしまった。
そう考えると、おおよそ自分には似つかわしくない《淋しさ》が込み上げてくる。
立派すぎる程立派な墓にファントムの躰を埋めきったとき、その感情はほぼピークを迎えてしまっていて、思わず泣いた。
形見とでも言うように、わざと埋めずにおいたファントムの腕を抱いて、延々と。
零れた涙で、たとえ土が塩の味になったとしても構わないと、大声で泣いた。
思えば、あれが自分の記憶の中で最初の涙だった気がする。