しょうせつ
□見よ、主は冥い土の中に
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「ペタ…、ペタ、淋しいよ…。寒くて痛くて苦しくて…。ここは辛いんだ…」
溶けていく。
終わらないような悪夢の中、ファントムは朽ち果てていく。
私をただひたすらに睨めつけ、血液と腐った肉から出た水分のような涙を流しながら。
「おいで…、迎えに来て、ねえっ…。独りは厭だよ…!!」
叫ぶ唇がだらりと爛れる。
その奥から、いやに白い歯が、咽頭の虚ろな穴が生々しく覗く。
骨に皮だけを張り付けたような姿へと、ファントムは自らの意志とは関係なしに変態を遂げる。
そこでいつも夢は途切れる。
私だけがいつも目を醒ます。
ファントムを置き去りにして、私だけ、が、…目を。
彼は、ファントムは。
土の深くで私を憎んでいるだろうか。
独りにしないと、誓った私を憎み、空想の中で何度も殺し。
冷たい光を放った隻眼を大きく見開き、土に汚しながら私を呪うだろうか。
私は、…無力だ。
「…ッどうかお赦しを……!」
見よ、主は冥い土の中に、
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