□純情少年。
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強めの台詞を吐いた私に目を丸くした仁王君から視線を外すと、傍にあった洗面台へ顔を近付ける。何人もの不潔な手が触れたそこにあまつさえ粘膜を纏っている感覚器官を接触させることに抵抗が無いと言えば嘘になるが、特段極端に嫌悪も感じなかった。
がちん。
金属音がなる。当然だろう。鈍く光る銀色を噛み締めた歯が痛かった。

「ちょ、お前さん…!」

流石に慌てた様に声を上げる仁王君。そんなもの私の耳には入っていなくて。首を不細工に傾けながら蛇口を捻った。緩く締められていたのだろうか。顎と言う微々たる力ですら、その蛇口は水を零した。それを確認すると、呆然とする仁王君の右手にがぶりと噛み付く。僅か呻く声が聞こえたが、聞き流して噛み付いたまま手を流れる水へと誘った。

「あほ、口でゆーたら洗うわ」

漸く意図を理解した仁王君がふぅ、と溜息を吐いた。従わなかったのは貴方でしょう、と。思わず口からそんな言葉が飛び出そうとしたから慌てて留めた。
仕方無しと言う風に両手を水に浸し、手に溜まった洗剤を洗い流す仁王君を認めると、今度は床に膝を付き膝立ちになる。それにまた仁王君は怪訝そうな眼差しを私に向けた。

「次はなん?」

安易に洗い終えた手から水を飛ばす為に、ぱたぱたと手を振り回しながら私へ向き直る仁王君。その拍子に私の顔へ水が顔へ掛かり、冗談粧しに膨れてやるとそれを仁王君は可笑しそうに笑い、利き手の親指で水滴を拭ってくれた。

「今の、かわいい」
「嬉しくないです」

くすくすと小さく笑う仁王君へ在り来たりな文句で応えると、そのまま丁度眼前にあった仁王君の股間へと顔を埋めた。すん、と匂いを嗅ぐと嗅ぎ慣れた香りが鼻腔へ流れ込んでくる。

「は、なん?」

思わず腰を引いた仁王君を壁へと押し付ける。鼻息荒く布地の上から唇を這い回せるとその度腰がびくびく震えた。

「わ、ちょ、こら!」

それが何だか面白くて繰り返していると、いつの間にか力を無くしていた仁王君が元気を取り戻す。気を良くした私はついに舌を出してそこを舐め上げる。案の定布に守られたそこは自らの舌に繊維を張り付かせるだけしかしなかったが、舐めた瞬間中の物がどくりと脈打つものだから、嬉しくて仕方無かった。

















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