□蝶々結び
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以前丸井に、女々しいと言われたことがある。
確か風紀委員である柳生と、同じく風紀委員のなんとかさんが最近仲良しだと聞き、それを丸井に愚痴った時だ。






「ほれ丸井。あれよ、あれ」
「んー?」

2限目の休み時間にぼーっと窓の外を眺めていたら(その時俺は窓側の席だった)、中庭を柳生となんとかさんが並んで歩いているのに気が付いた。むっとした俺は一つ前の席でポッキーを齧りながら漫画を読んでいる丸井に声を掛ける。丸井は興味無さげに顔を上げ、俺の指差すまま柳生の方を向いた。

「お、かわいー」
「どこがじゃ。俺の方が可愛いわ」
「…………、」

予想外にも丸井は柳生の隣でキラキラ微笑むお下げ髪を可愛いと言う。いかにも真面目そうで、清楚な印象を受けるそいつは、決して丸井の好みじゃないと思っていたのに。案外万人受けする顔をしているのかもしれない(俺は断じて可愛いとは思わないが)。
普通こんな時は俺のことを考えて言葉を選ぶものじゃなかろうか。流石天下の丸井ブン太様だ。
頬杖をつきながらぶすくれていると、丸井はげんなりとした表情をしてみせた。その後俺を小馬鹿にしたような笑顔に変わる。それが癪に触ったものだから少しだけ目を吊り上げ睨んでみせるが、当の丸井はあっさりとそれを流し、挙げ句にけらけら笑いだした。

「おっまえ、女々しいな!」
「はぁ?」
「ムカつくんなら柳生に言やぁ良いじゃん。俺以外と仲良くすんなー、って」
「出来るかアホ」

俺の返答を聞いて丸井はますます声を上げて笑いだした。どうやら独占欲を相手に見せて嫌われたくない、という俺の見解は女々しい部類に入ってしまうらしい。それならばお前はどうなのか。目の前で腹を抱えてひーひー言っている丸井にそう尋ねると、彼からは何とまぁ男前な答えが返ってきた。

「は?言うに決まってんだろぃ。今日話してた奴誰か聞いてムカつくからやめろっつってコンビニで何か奢らせる」

最後のはいつもと変わらないんじゃないかとか、というか独占欲を曝け出しすぎるのも逆に女々しいんじゃないかとか、色々思う所はあったが、椅子に踏ん反り返って自慢気に話す丸井が何だか可愛らしかったし、潔くぶっちゃけるのは男らしいかな、とも思ったから触れないでやった。

「お前さんすごいのぅ」
「だろぃ?もっと誉めろ」
「おうおう」
「わっ、頭触んな!崩れんだろ!」

その時は今一丸井が言うことがあまりピンと来なくて、俺はとりあえず頷きつつ丸井の頭を混ぜくった。ワックスでセットされた丸井の髪は、べたべたと俺の手に張りついてきて、何となく嫉妬みたいだな、とそう思った。
























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