□I'm regard him as a close friend of mine.
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定期考査前の部活休止期間、それはテニス部に与えられる唯一の長期休暇だ。勿論各々考査に備える為のものなのだが、貴重な放課後を勉学に費やす者はそう多くない。友人や恋人と誘い合って街へと繰り出し遊び明かす、というのが部員たちの決まりのパターンになっている。通知表の数字より青春を謳歌することが大切だ、というのが彼等のモットーなのだろう。
しかし柳生比呂士という男は、その例外であった。そして言わずもがな、ダブルスパートナーである仁王雅治もそれに巻き込まれている。仁王は、常々、柳生には柔軟性が足りないと思っている。真田までとはいかないまでも、仁王からしてみればガチガチもガチガチ、烏賊の鯣みたいなものだ。2週間にも及ぶ部活休止期間の内、1日でも良いから遊びに出掛けようと言った仁王に、柳生は頑として首を縦には振らなかった。












ただ、ノートを捲る音とシャープペンシルで文字を書く音しか聞こえない。時折遠くから聞こえる野球部の声が心地いいと、そう柳生は思った。胸のポケットから懐中時計を取り出して時間を確認すると、勉強を始めてから1時間以上が経過している。そろそろ休憩の頃合いだろうか。柳生は向かい合わせた机にだらけて座っている仁王に声を掛けようとし、そして止めた。机の上に半ば突っ伏すようにして、至近距離でノートを眺める仁王の姿勢は褒められたものではなかったが、目は真剣そのものであった。余程、集中しているのだろう。柳生は無意識に微笑を零し、もう一度シャープペンシルを手に取った。仁王の集中力が途切れるまで付き合って、それから休憩すれば良い。あんなに街へ出掛けたがっていたのに、一度入り込めば簡単に戻って来ない仁王は少し単純で、何だかとてもいじらしく思えた。









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