□くちびるのねつ
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「んだよ、これ、」

早朝、自宅の鏡を見て俺は唸った。最悪、劇的に学校行きたくねぇかも。







「ブン太、昼飯ー…って何死んでんだ、お前」
「うっせぇ、向こう行け」

とにかく学校には行き、そして昼までは何とか持ち堪えた。しかし、しかしだ。他の奴らはともかくとして、ジャッカルにはこんな顔見せられない。机に突っ伏せたまま追い払ってみる。

「はいはい、行くぞ」
「うなっ、離せっ離せっ!バカ!ハゲ!」

あぁ、もうこんな時だけ強引なんだ。荷物を運ぶかのように肩に担がれ、そのまま屋上に連行。
その間、逃亡を謀るため俺は必死にハゲの背中を叩いて攻撃していた。いてぇ、いてぇ、ハゲがそれだけ言いながら笑っていたのが、一番ムカついた。






「到着っと。で、何があったんだよ」
「‥‥‥‥」

屋上に着いて早々、どかりと腰を下ろしたジャッカルは、俺を前から抱き込む。勿論俺はずっと顔を隠していたが。

「こっち向けって」
「‥‥‥いや、だ」

ふぅ、と溜息が吐かれる。まただ、またジャッカルに迷惑を掛けた。罪悪感に身が竦む。ごめん、ごめん。

「ブン太、」
「‥‥‥」

背にあった手が首をなぞり顎を辿り、ゆっくりを俺を上向かせる。見られる、いやだ。

「わ、何だこれ。痛いか?」
「痛くはねぇけど、‥‥キモくね?」

俺が今日ずうっと気にしてたもの。唇の周りに出来た発疹。ぷつぷつと膨れるそれは熱を持ち、不快さだけを俺に伝える。痛くはなくとも気になってしまい、思わず触れれば軽い刺激にぷちりと皮を破く。染みだした汁は周辺を犯し、たちまちに新しい発疹を作る。それの繰り返し。半日で俺の口周りは見事に腫れた。

「痛くねぇんだな?舐めても染みたりしねぇ?」
「それは、別に‥」

あれ、キモくねぇの?
純粋な疑問を抱え見上げると、不意に唇に感触。
べろりべろり。

「俺にうつせよ」
「っ、‥」

キスというには拙すぎる。愛撫というには幼すぎる。でも、暖かかった。
舌と唇と使い、ひたすら傷を舐め上げる。
かと思えば、ちゅうと吸い上げ、歯を立て傷を広げる。
矛盾甚だしい口付けは長く続いた。






次の日、口周辺の発疹を悪化させた俺と、うつされたジャッカルは二人揃って病院に行くことになる。






「バカ、ハゲ」
「すいません‥」
「でもさ、二人とも同じ病気ならさ‥‥」






いっくらキスしても良いんじゃね?







end

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