□common sense
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こんなに部活がハードなのは久しぶりだ。息も絶え絶えに辿り着いた部室で、誰しもが床に倒れ込む。
指1本でさえ動かすのさえ億劫だった。乱雑に投げ出した足が何かに乗っている、と同時に何かに乗られている。皮膚が直接べたべた張り付く感覚が気持ち悪くて、スニーカーを履いたままの足先を最低限だけ動かして上に乗っている何かを蹴飛ばすと、あぎゃあと変な声が上がった。

「まーるいせんぱーい、いたいっす」
「んだ、赤也か。どけ、重い」
「ブン太、お前も重い」

自らの下にあるものが蠢いた。どうやらジャッカルの背中らしいいが、赤也の足を蹴り落としたことによってすっきりした俺は、ジャッカルの言葉には従わず再び脱力する。極限まで酷使された両足はパンパンで、少し高い位置にすると、何となくマシになる気がしたからだ。俯せたままの状態らしいジャッカルは、大変辛い状況であろうが、まあそれは、何と言うか、そう、不可抗力ってやつだ。

「貴様ら、しゃきっとせんか!!!」
「そういう真田も膝が笑ってるけどね、ふふっ」
「ぬおっ?!」

いつまでもぐだくだしている俺たちに真田が噴火しそうになったが、その前に幸村が遮る。容赦なく真田に膝かっくんを食らわせ、そのまま前方に崩折れた真田を指差して笑うなんて、幸村はやはり猛者中の猛者に違いなかった。床に潰れて小さく痙攣し始めた真田には目もくれず、すぐさま着替えを再開する。その様子を見た他の部員もまた、真田が復活する前に部室を出ようと心を決めたのだった。

「よっ、と!ほらブン太、俺らも帰ろうぜ」

再び足の下でジャッカルが動く。今度は明確な意思を持っていたため、腕立て伏せの要領で起き上がったジャッカルによって、俺の両足は部室の床とこんにちはをすることになった。汗ばんだままの肌に、床に散る砂の粒がたくさんくっついて非常に不快だ。立ち上がってすぐにロッカーを開いたジャッカルを仰ぎ見るが、俺はどうしても動く気になれなかった。真田が撃沈した隙を狙って、赤也でさえもテキパキと片付けをこなしているのに。

「何か、すげえだるい」

ぼそっと小さく呟いた言葉は、周囲にいたごく僅かの人間にだけ聞こえたようだった。柳生は「みんな同じですよ」と言って苦笑を漏らし、仁王は「分かっちゅうことをわざわざ言うな」と悪態をついてきた。確かにその意見は正しいと思うのだが、それでも、やはり今日は何故かいつもより気だるい。俺の言葉に反応はするものの、誰も俺を強制的に起き上がらせようとはしなかったから、俺は動く気など毛頭ないまま重力に従っていた。















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