□優しさ120%
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また、まただ。
視界の隅に捕らえた光景に苛々が募る。無意識にぎりと歯を鳴らし、溢れそうになる感情を押し込めた。
早く気付け。
半ば祈るような気持ちでそれを睨む。そうすれば、ご機嫌斜めな俺に気が付いたそれが、慌てて駆け寄ってくることを知っているから。苦笑しながら両手を合わせ少し頭を下げて。
ここ1週間毎日見ている気がする。

「悪ぃブン太、部活行くか」








最近、ジャッカル桑原は調子に乗っている。放課後、俺の迎えに来る前に、どこそこの委員会やら何やらの手伝いをしているらしい。優しくて、力持ちで、頼れるジャッカルは、やはり相当役に立つようで、引っ張りだこ。
そうやって俺を30分も待たせるんだ。まぁ、ジャッカルは先に部活行ってろって言うんだけどな。やっぱ一緒に行きてぇじゃん。
そこまでならまだ許す。
でもな、毎日毎日女子からの贈り物を持ったジャッカルとは会いたくねぇんだよ。
大半はお礼として貰ってくるのだが、どうもその中にお礼以外の気持ちが籠もっている物がある。
手の込んだお菓子、可愛い包装紙、繊細なリボンに丸文字のメッセージカード。明らかに好き、が全面に出ているそれを、ジャッカルは何の躊躇いも無しに俺へ譲る。優しいジャッカルが何とも思わず贈り物を俺へ渡すのは、その真意に本当に気付いていないから。

「ほら、ブン太にやるよ」

鈍感なハゲは気付かないらしい好意の塊を、俺もまた躊躇い無しに食べた。
口に入れれば、とても甘いそれは、女生徒の心を如実に示しているようで、複雑な味に変化する。
俺はまた。
純粋な愛を食らい尽くす。込められた意味を知っている俺はそれでも、隠すようにジャッカルから掠め取り貪欲な迄の胃袋で全てを溶かした。










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「うへぇー、疲れたー」

ジャッカルに貰ったお菓子でチャージした俺は今日の部活も絶好調。妙技のキレも抜群だった。

「丸井せーんぱい。お疲れッス。これ、どーぞ」

部活終わりにベンチでダレいると、後輩からジュースの差し入れ。彼は俺にボトルを投げると、隣に腰を下ろした。その後輩らしからぬ行動に笑みが零れた。













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