□巷で噂のレモン味
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いきなりですが、俺とブン太が付き合い始めて2週間が経ちました(や、違う。明日で3週間だ)。
毎日の様に俺が好きだ好きだ言っていたブン太に、何の気なしにはいはい、俺も好きだと告げたらじゃあ付き合おうぜなんて話になって、いつの間にか恋人同士だった。俺はずっとブン太の「好き」が友情の好きだかそれ以上なのか全然分からなくて、だからこそ返事をしなかったのだが、どうやら後者だった様だ。いやでもしかし、今の状況からするとやはり友情の「好き」ではなかったのかと思わざるを得ない。
今の状況と言うのはつまり。付き合い出してから、目に見える変化が見られないのだ。
強いて言えば、いや、強いて言っても変化がない。無さすぎる。と言うか、付き合う前からハグ辺りは当然だったりしたから、その所為なのかもしれない。
別にそれが不満な訳じゃあないが、残念ながら俺はブン太に好きと言われる前からそっちの意味でブン太が好きだった。

「なぁ、ブン太」

彼の姿を認める度に思う。好きだ、と。大好きなんだ、と。

「んー?」

まぁ彼はそんな俺の葛藤には、全く気付いていないのだけれど。別に良いけどさ。いや、ダメだ。それが問題なんだって。
と言う訳で、長々と前置きしといてアレなんですが、とにかく俺は、ダブルスパートナー(兼恋人)の丸井くんと、キスがしたいのです。
おいこらそんな嫌そうな顔すんな、俺結構真面目な話してるんだ。

「ジャッカルー?何ー?」

名前を呼んでおいて何も言わない俺を疑問に思ったのか、ブン太が首を傾ぎながら尋ねてきた。俺の机を挟んで正面に座る(今更だが昼食中だ)ブン太を見つめると、唇に視線が行くのは最早不可抗力だと思う。

「おい、聞いてんのか」

うんともすんとも言わない俺に、ブン太はいよいよ不機嫌な色を醸し出した。普段より僅か膨らんだ頬、それに伴って動いた唇に釘付けになる。
女の子みたいなぷるぷるつやつやではないが、一応リップクリームを使ってケアされているそこは、どうしても魅力的だった。

「おいっ!」

またもや何も言わない俺に、ブン太は業を煮やして立ち上がり、見下ろす形で俺を睨んで更に頬を膨らませる。
なぁブン太。
お前の赤髪の後頭部に右手を差し入れて、そのままくいっと引っ張って、お前の唇と俺の唇を触れ合わせたりしたなら、お前はどんな顔をする?














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