□くだらないのかもしれないけれど、
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ジャッカルが、浮気した。








深刻な話がある事は、ジャッカルん家に着くまでのジャッカルの態度で何となく感じ取ってはいたが、部屋に着いてみるとそれは確かなものとなった。ベッドに腰掛ける俺の前に、まるで土下座するような形で正座したジャッカルを見て不審がらない訳がない。
まぁその読みはばっちり当たってたんだけどな。
俺と喧嘩した当て付けだとか、逆レイプだとかじゃなくて、お互い同意の上での事らしい。そうだよな、ジャッカル?

「ごめん。告白されて、断ったら泣かれて、1回だけって迫られて、断れなかった」

そう苦々しく言うとジャッカルは俯いた。本当に悪いと思っている事が、うなだれた様子から見て取れる。いつもの爽やかな笑顔はすっかりナリを潜めていた。昨日まで休日にジャッカルの部屋で過ごすこの時間は1週間の中で最も楽しみな時間だった筈なのに、残念な事にこの空間には過去最大級の気まずい空気が流れている。

「言わなきゃバレねーのに、何で言う訳?」
「言うつもりなんて、なかった。なかったけど、やっぱ隠したままにはしとけなくて、ごめん」

不機嫌を隠そうともせず声を出したら、俺の声は思いの外低く、自分の怒り具合に正直喫驚した。まぁ恋人が浮気したってんだから、仕方ないのだろうが。

「で?別れようとか、そーゆー話?」

俺は何の感情も乗せず言葉を続ける。女関係の別れ話なんて、何度もシュミレーションした状況だ。
いつかは、こういう時が来るって、俺は分かってた。
どう頑張ったって俺は女にはなれない訳だし、そうなると自然と出来る事は少なくなる。つまり普通のカップルが出来る事が出来ないのだ。その事が恋人としてジャッカルを満足させられない事だって、重々承知だった。
と言うか、ぶっちゃけた話。

「女のが気持ちよかった?」

そりゃあそうだよな、だって俺の体は受け入れる為には出来てない。第一冷静に考えてみろ、ケツの穴に突っ込むなんざ正気の沙汰じゃあない。

「別れっか」
「何で、んな事言うんだよ」

浮気したのはそっちだって言うのに、俺の一言でジャッカルは文字通り顔面蒼白になった。絶望を絵に描くとするなら、きっと今のジャッカルそのまんまだろう。俺の言葉が相当ショックらしいが、自分が浮気しておいて俺に縋るような視線を寄越すのは少々お門違いなのではないのか。









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