OR

□肥後もっこす
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『千歳?』




あぁ、ほんなこつよか夢たい。どっか遠くん方で桔平が俺ん名前ば呼びよらす。

『千歳っ!千歳て言いよっとたい!』

何だろか、さっきより近くなった気がすっばいね。幸せ100倍ってやつたい。

「千歳!起きんや!千歳!」
「は、あれ?きっぺー」

半端なか音量が耳をつんざいたと思いよったら眼前には桔平登場。この状況は幸せすぎてから、あ、俺、死んだとかな、とか普通に思ったばい。

「何、しよっとや…、ほんなこつ。心配、かくんな」
「桔平…。ごめん」

意識が覚醒してきてから、漸く思い出したばい。俺、風邪引いてから学校休んだとだった。
桔平を見つめとっと凛々しい顔が歪んで、そっから顔が見えんごてなった。桔平が俺の横たわっとる布団に顔を埋めたこつが分かった。申し訳なくて、ちょっとばかし視界に映りよる金色を左手で撫で付けてやった。

「杏から聞いた。寝込んどんならはよ言わなんたい」
「ミユキん奴杏ちゃんにゆったとか」

顔を笑みの形に作ってみたばってん、声が追い付かん。はは、と紡ごうてした喉はつっかえてから咳が出た。ひりひりと張り付いとるごたっで気持ちが悪か。

「親父さんは」
「工房に籠もっとるよ」
「飯食っとらんとだろ?台所借りっばい」

今気付いたばってん。
俺って結構重症なのかもしれん。頭がぐらぐらしてから桔平が3人くらいに見ゆっけん。それはそれで嬉しかとばってん、如何せん、好いとる桔平の顔は不機嫌を映しとるけんプラスマイナスゼロたいね。

「きっぺ、よかけんここおって」」

桔平が俺から離るっと鼻の奥がつんとした。病気になっと人ってものはほんなこつ弱くなるばいなぁ。淋しくて不安で胸が張り裂けんか心配ばい。

「我が儘ゆわんと」
「頼むけん、」

立ち上がった桔平の手首を力なく掴んで縋っと、桔平は困った様な表情をして、そがんでも結局は俺の手から逃れた。あぁ、スパルタすぎやせんか。

「飯が先たい。大人しく待っとって」
「……はい」

だけんてゆってから、逆らったりしたらそれこそ結果は目に見えとっけん大人しく黙った。桔平は九州男児らしか、頑固と言うか何と言うかアレたい。まあ長所ては思いよるけど。いかん、胸が痛かなあ、ベイベ。

「千歳」
「んー、なんね?」

不貞腐れた声色になったこつを、桔平は気付いたっかな。

「飯食ったら、傍におってやるけん」

桔平はそぎゃん言うてから、耳ば真っ赤にしてから部屋のドアをどん!て締めらした。むぞらしくてしょんなかね。

「桔平大好き!」
「知っとるばかたれ」







end
使えるものは使おうと思って全文熊本弁にしてみました。

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