OR
□光へ闇へ
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ぼくの彼氏は赤澤です
赤澤の彼氏はぼくです
ぼくには枷があるのです。
慈愛に満ちた彼に付け込んで、彼を落としめた過去があるのです。
「赤澤先輩っ、ずっと好きでした!付き合って下さいっ!」
耳に入る女生徒の声。ぼくは鼻で嘲笑う。どんな絶世の美女が彼に言い寄ろうが、彼の隣はぼく一人だけ。無駄な努力だと、哀れだとぼくは思う。
ぼくの中に歪んだ気持ちがひ、ふ、み。
ゆらりゆらり。
罪深いぼく。
そんなぼくを傍に置く君はぼくの比にならない程汚れた人間なのか。
赤澤吉朗。
最後の忠告にして、最後の頼みだ。
お願いだから、卑怯で曲がったぼくを、許さないで、突き放して、もう、優しくしないで。
みづき、みづき、
ほら、まただ。
それでも君はぼくを呼ぶ。
「あかざわ、」
舌っ足らずに甘えた声。
隣に存在する温もりに手を伸ばせば、躊躇いもなく与えられた。
優しくしないで。
「どうした観月、今日はまた一段と血がねぇみたいだな」
恋人にするには些か強めではないかと云う力で髪を撫でられる。
低血圧は、そういう意味じゃないんですよ。
何度言っても理解しないからもう言わなくなった決まり文句。
頭がぐるぐるして、眠い。
「眠い、」
「ん、まだ良いよ」
じゃあ何で起こしたんだ。けだるい体は言う事を聞かず、口が動かない。
「ぎゅ、って、」
両手を伸ばせば長い腕で体をさらわれる。薄く開いた目に、彼の腕をぼくの腕を同時に見つけて、あまりの違いに普通にショックを受けた。
ぼくだって男だ。
健康的に日に焼けた褐色の肌。逞しく太い腕に流れるような無駄のない筋肉。
ぼくは溺れる。
細くて、白くて、何一つ守れないようなぼくの腕。
それと対比してだろうか。
彼の全てに溺れる。
太陽のような彼には、
一欠の陰りもなく、ただただ神のようだと、ぼくは思う。
「お天道さんに顔向けできねぇことだけはしちゃだめだぞ」
ごめんなさい、赤澤。
ぼくは太陽の下には居られない。
純憐すぎる光を浴びて、どす黒いぼくは灰になる。
もう、優しくしないで、許さないで、突き放して、嫌って嫌って嫌って、愛して。
大好きな貴方を、汚したくないの。
end