OR

□俺達的切なさ理論
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朝起きてまず打つメール
誰より早く彼に挨拶



耳慣れた着信音
素っ気なく綴られた
「おはようございます」の文字



寒さに凍えながら三丁目の本屋で彼を待つ時間
低血圧な彼を考えながら
俺の金糸に霜が降る



目に眩しい金を捉えた瞬間
駆け寄りたい衝動を抑え近付けば
痛いくらいに真っ赤な鼻
くすりと笑えば
「お前の所為だ」と毒づく可愛い口唇



急に香る彼に目を見開けば
既に離れた温もりは
彼に盗まれていた



並んで歩くと
頭一つ分も違う背丈



学年の違いによって
引き離される俺たち



異なる昇降口へ向かう
彼の背を見送った



教室へ向かう途中
ポケットに突っ込んだ
右手が触れた彼のピアス



けだるい朝会
10列以上も前に
ひょこひょこ揺れる金の頭



俺と違う上履きの色



一限目
彼の好きな数学



二限目
グラウンドから聞こえた大声
普段クールな彼が熱くなるサッカー


三限目
「倹約」を「謙也君」なんて
読んでみて
教室爆笑
もちろんわざと



四限目
退屈な古典
ノートの隅に小さく書いた彼の名字と俺の名前
"財前謙也"
恥ずかしくてソッコーで消した



昼飯
彼と二人して屋上に
寝転んで
溶けるような甘ったるい
日差しの中で
形を失わないよう
強く抱き締め合った



五限目
彼の匂いが
俺から離れず
授業に集中出来ない俺は
頬杖を付いて
ペンを回した



六限目
脳内はオンリー彼
本人には絶対
言わんけど


放課後
俺が迎え行くって
おかしない?
二年の教室、
通い慣れた彼の教室



帰り道
二人しか知らない
秘密のキス












彼と交わす数多の言の葉
彼と電波で繋がる数多の電話、メール、彼の声







全てが
俺達的切なさ理論






end

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