OR

□○○行進曲
1ページ/5ページ












なにしろ、タイミングが悪かった。

その日は偶々雨が降っていたから朝から髪の毛が纏まりゃしないし、その髪の毛を無理矢理整えようと鏡の前で悪戦苦闘した結果案の定時間が無くなって朝食抜き。朝練に遅刻するのは流石にまずいと慌てて家を出たのは良いが、バスの中で鞄を開くとその中に財布と弁当は都合よく存在していなかった。急いで学校へ向かったものの雨の所為か混雑したバスのおかげで結局朝練にも遅刻。真田副部長から15分の説教と外周10週を頂いた(学校に着いた時には雨はすっかり止んでいたのだから余計に腹立たしい)。朝食昼食共に抜きになった俺は、友達に金を貸せ、一口くれ、とせがんでみたが最終的に貰えたのは50円と玉子焼き1個だけ。まぁ男の友情ってのはそんなもんだ。それならばとジャッカル先輩に集ろうとしたが、こんな時に限ってジャッカル先輩は教室にはいなかった(後から聞いた話だが、3年だけなんちゃら集会が開かれていたそうだ)。挙げ句英語の時間返されたテストの答案はのび太くん顔負けの点数、国語の時間は居眠りで立たされ、数学の時間に至っては板書が当たっていたのを忘れ担当教師から大目玉を食らった。
とにかく俺の機嫌はすこぶる悪く、それこそ最早誰かの手に負えるものではなかったのだ。












部活が始まってもそれは変わらない。

「え、俺赤也とー?」

遠くの方で丸井先輩が文句を言うのが聞こえた。どうやら試合練習で俺と当たって、それがどうも不服らしい。ジャッカル先輩が必死に丸井先輩を宥めている。

「すんませんね、俺で」
「べっつに」

近寄って嫌味を含めそう言ってやると、丸井先輩も頬を膨らかして返してくる。どうやら丸井先輩も不機嫌なようだ。ムカつくことこの上ない。丸井先輩とつるんで悪さしたりするのは勿論楽しいし、丸井先輩自体さばさばしていてとても好きだ。だがしかし今日だけは別だ。俺だって機嫌が悪いし、その状態で我が儘マックスな丸井先輩と試合だなんて最悪以外の何でもない。

「さっさと終わらせましょうよ」
「ったりめぇだ」

乱暴にラケットを掴みサービスの位置につく。ネットの向こうを睨み付けるが、丸井先輩は俺の視線など意にも介さず至極ゆっくりとレシーブの位置についた。
何もかも気に入らない。
俺はボールを持つ左手に力を込めながら振りかぶると、渾身のサーブを繰り出した。ラケットに打たれたボールは真っ直ぐ相手コートへ飛んでいき、サービスコート内に一度体を地面へつけさせた。
そして、その後は。

「ナックルサーブ!」

そこから急激に変化した球筋は丸井先輩の顔面へ向かい、ボールは猛スピードで跳ね上がる。丸井先輩は慌て身体を反らし避けようとするが、それは間に合わなかった。

















次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ