□袋小路
1ページ/5ページ





意識が覚醒した。と思ったら、枕元の携帯がわんわんと騒いでいる。初期設定のままである電話着信音は本当にうるさくって仕方ないと思った。丸井や切原は、携帯を満足に使えない柳生にマナーモードというものを教えてやったのだが、柳生は携帯を目覚ましとして使っているため、寝るときにマナーモードを設定しない。電源をオフにしていても目覚まし機能だけは作動するという便利な使い方が携帯にはあるのだが、そんなものを柳生が知るわけもなかった。丸井や切原がいくら親切であっても、柳生が寝る際に携帯を目覚まし代わりに使っているなど、知っている人物は誰もいないのだ。しかしながら、柳生は着信音や待ち受けを変えるために掲示板やインターネットを使用することはなかったから、迷惑メールなんて入ってくることはなかった。更に言えば、深夜に電話やメールをしてくるような非常識な友人も柳生にはいない。携帯からしてみれば半分以下の力さえ出せていないのだから不本意であろうが、柳生としては大満足である。
否、訂正。大満足で、あった。


柳生の最大の過ちは、せがまれるままに仁王へ電話番号を教えてやったことに違いない。メールアドレスだけであったならまだよかったものの、ばっちり番号を教えてやったばっかりに(赤外線というものは送る情報が選べないらしい。本当に厄介である)、仁王という人間の自由奔放さに良いように翻弄されている。











次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ