□それは媚薬の如く
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その極上な幸せをぶち破ったのは突然右足に走った激痛。思わず足が止まってしまった。

「ってぇ‥」
「どうかしました?」

柳生は歩きながらかき氷を食べていた(紳士らしからぬ行為じゃの、俺の影響じゃ)手を止めると、心配そうな顔で見つめてきた。

「ん、いや。別に」
「‥‥」
「何じゃ、その目は」
「‥‥」
「無視すんな」
「仁王君、浴衣とか‥、下駄とか初めてだったりしますか?」
「スルーすんなよ。まぁ、えぇ。初めてっちゅうわけでもないが、久しぶりではある」

何か文句あるけ、と挑発の瞳を向ければ明らかに苛立ちの瞳を返される。

「乗って下さい」
「痛‥っ‥」

強引に背負われるときに、再び襲った痛みに声があがる。でも、出来るだけ、聞こえない様に小さい声で呟く。右足の、親指と人差し指の間が痛くて痛くて仕様がない。
その後無言の柳生は、周りの目を気にする風でもなく歩き始めた。
そして、段々人の少ない方へと向かって(期待する俺はアホじゃろうか)。大通りを離れて脇道へ。左右に広がる森、の中へ。

「柳生、何処行く?つか何じゃよ?」
「大丈夫ですから黙ってて下さい」

それきり俺は黙った。彼が大丈夫と言えば、きっと大丈夫だ。









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