□world
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「私、結構悩んでたんですよ」
「うん?」
「医師団の話です」
「あぁ」

柳生に倣って再び料理へ箸を戻し(実際に戻したのはナイフとフォークだが)、再びチキンを切り分ける。視線を落とすと柳生の手とそっくりなそれが目に入った。細長いが骨張っている指なんて、全くと言って良い程違いがない。それなのにどうしても柳生の手の方が遥かに魅力的でキラキラしているように見えるのは、俺だけなんだろうか。
そんなことをぼんやり考えていると、柳生伏せ目がちに微笑み、そしてゆっくりと話しだした。

「正直、不安だったんです。貴方にこの話をして別れを切り出されたり、そうでなくても2年間も離れた状態になったりすることが」
「別れるつもりじゃなかったんか?」
「えぇ、貴方から別れを切り出されたりなんかしたら私はきっと気が狂ってしまいますから。私から別れを告げようとしました。でも、」

そこで区切った柳生は俺の顔をじっと見つめる。続きを待てども中々彼の口は開かず、俺は何だか恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。その事にふっと笑った柳生に負けた気がして悔しかったが、文句を言う前に柳生は再び話し始めた。
前から思ってはいたが、とことん空気が読めない奴だ。

「でも、貴方はやはり貴方だった」
「は?」
「仁王くん、愛しています」
「いや、は?意味がよう分からん」
「ふふ、すみません。でもこの言葉が1番しっくりくるんですよ。貴方が貴方である限り、私は貴方を好きです」
「は、はぁ…」

ですから、仁王くん。
私がいない2年間、どうか私だけを想っていて下さい。私も毎日貴方だけを想っています。
貴方が悲しいとき辛いときに、私は貴方の側にいることすら出来ない。でも、必ず、必ず帰ってきますから。約束しましょう。貴方の知っている柳生比呂士は簡単に約束を破るような安い男ではない筈です。2年後、私は絶対に貴方の隣で笑っています。そうです、絶対に。
だから笑いなさい。仁王くんに涙は似合わない。




















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