□ぐるぐる、ごっこ
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「マンが女で、チンが男」
「えっ、……あぁ!」

元々知力と考察力を兼ね備えた男だ。俺が与えた最小限の情報からぐいぐいと推理の蔦を伸ばし、瞬時に疑問解決に至ったようだった。こんなに賢いのに何故、この疑問をググって解決しようとしなかったのか全く分からない。普通こういったことを人に聞くのは恥ずかしいことなんじゃないのか。少なくとも俺は恥ずかしい。悩みの種が綺麗さっぱり消えて溌剌とする柳生に反して、俺の心は何だかどんよりしてきて晴れそうにもなかった。
そんな俺を横目に、柳生は早速持論の展開に入る。旋毛からぴこんと芽が出たように見えるのは俺だけだろうか、おそらく双子葉類だ。緑色のそれは露を称えてきらきら光っている。あぁいやだ、ポエマー柳生と年がら年中一緒にいる所為で俺の頭までお花畑になってしまったかもしれない。頭をばたばた振ってみたが、何度見ても柳生の頭から生える生命の赤ちゃんは消えることをしなかった。そんな俺を見て柳生はまた、仕方ないですねえ仁王くんは、と言って頭を撫でてくる。そんな場合じゃないんだってば。

「あぁ成程、畢竟するに女性器の名称が、」
「ストーップ!それ以上は脳内論議で頼むぜ」

どこの性教育だ。これ以上柳生に喋らせると、とんでもないことになる気がするのは俺の思い違いではないだろう。何が悲しくて俺は恋人とヤリマンだとかヤリチンだとかいう話をしなきゃいけないんだ。強引に話を止められた柳生は不服そうに俺の方を見ているが、俺の知ったことではない。そんなに話したけりゃあ参謀とでもやっとれ。まぁ柳生と参謀が性について熱く語る姿なんて、恐ろしくて想像したくもないが。俺と丸井と切原が戯れにするくだらない下ネタ談義の100倍くらいコアで、マニアックで、えげつないに違いない。俺が1人悶々としている隣で、どうやら柳生も違う意味で悶々としていた。何だかんだ言って自分の好きなジャンルに関して語ることの好きな柳生は、話したいネタがあるにも関わらず口に出来ないこの状況が辛いらしかった。口を開けては閉じ開けては閉じ、目も何かをこっちに訴えている。

「なぁ柳生、キスしよ」
「えっ、それ…、」

柳生が何か言う前に顔を寄せて、かぷっとその唇に噛み付いてやった。一瞬硬直した柳生の体だが、すぐに俺に応えるように動き始める。キスで話題変換だなんてフェアじゃない気もするが、だからってこれ以上ヤリマンとヤリチンについて掘り下げるつもりもない。とにかく、今日のところはこの話はお仕舞いって訳だ。空気の読めない柳生だけど、ここまで俺の意志を分かってくれない奴じゃないだろう。
何の気なしに地面へ置いていた右手に柳生の左手が重なったとき、俺はそう確信した。









願わくば、柳生がグーグルの存在を知りますように。











end




迷走しすぎました。
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