□砂糖菓子より甘く
2ページ/4ページ



『おーいジャッカル!俺様からのメールだぜぃ!』


これ、以前俺がふざけて声録って、しかも着信音にしたやつだ。未だに変えてねぇのかよ?!
外を見れば家の前の電柱にもたれ掛かるジャッカル。彼の持つ携帯から聞こえる俺の声。恥ずっ、町内に俺の声響き渡ったっつの!
それにしても早い、早すぎる。けど、来てるなら入れば良いのに。
でも、それをしないのが彼。ハーフの癖に日本常識を弁えていて、何より他人を思いやる。待ち合わせをすると、必ず誰より先に来る。自分が待つのは構わないが、相手を待たせるのが嫌らしい。時間もピタリと合わせる。以前俺が聞いた時、彼は「だって待ってると不安だろ?」
そう言った。お前だって同じ気持ちなのに。
どこまでも、深く優しい。海の様に澄む彼の心が、大好きだ。
柄にもなく感動してうるうるしていると、不意に掌中で震える携帯。ビクリと伝染する様に震えて、俺はメールを開く。

[件名:了解!]
[何か知らねーけど、用事なら仕方ないって。気にすんなよな!俺まだ家にいたから全然良いし(^^)v]

彼は簡単に嘘を吐く。優しさの溢れる暖かい嘘を、たくさんたくさん俺にくれるんだ。
でもその度に、頬を水滴が濡らしゆくのもまた事実。

「ジャッカ、ル‥げほっ、げほっ」

我慢出来なくなり最後の力を振り絞って、家路についたジャッカルの背中に叫ぶ。頭は痛いわ、体は怠いわ、涙は溢るわ、声は出ないわ。もう本当に最悪だ。
振り返ったジャッカルは超人視力で俺の姿を認めると、走って戻って来る。

「なっ、お前、何で!」
「上が、れ‥誰もいねぇ‥から‥」

そこまで言うと、俺は意識を手放した。
それ程までに、辛くて。
でもそれ以上に、ジャッカルに心が安らいで。


















次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ