□例えばの話
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‥‥ん?
んんん?!
何故、何故桑原は弟君を抱き締めているんだ?!
見た所年も然程変わらないだろう?!
いや、これが現代か?!
ああ‥ああ!
桑原は外人だ。
そうだ、外国ではあれが普通なんだ。
よし、別にホ‥‥なぁ桑原どうなんだ?!









「ごめん、ブン太」
「アホッ、ボケッ、ハゲッ俺に、勝手で‥事故っ、とか‥、死ねよっ!」
「ん、ごめん」


もう何て言えば良いのか分からない位の幸福感。
ジャッカル、ジャッカル。やっぱり俺はお前が大好きだ。本当によかったよ。


「あほぉ‥」
「ごめん、俺はどこも行かないから」


きゅう、と抱き締められ、胸がいっぱいになって息が出来ない。愛しさが奥から奥から滲み出て、これが胸が苦しいということかと、他人事のように考えた。
俺がやっと嗚咽を止めた頃、ジャッカルは使えない右手なんて関係無いみたいに器用に俺を片手で抱き上げた。
左手一本でひょいとベッドに乗せられる。そのまま、ベッドに座ったジャッカルの足の上に座らされた。
一番安心する、俺の好きな場所。いつも通り包まれるように抱き締められて、俺の中に温かい波が押し寄せた。
何かさっきからジャッカルと相部屋の少年が無粋にもこちらをジロジロ見ているが、そんなの関係無い。


「腕、どうなん?」
(お前の腕は、テニスをするための大切な物じゃないか)
「ん、罅だって。浅いからすぐ治る」
「あほ、」

また、泣きそうになった。顔を俯かす俺に、ジャッカルは求める。

「ブン太、こっち向いて」
「‥‥?」
「欲しい」
「何、が?」
「お前が泣いてるの見たら、何かそういう気分になった。舌、舐めたい。口開けろ」


体中の血が沸騰するかと思った。先程まで緊張で硬直していた体が、解れて脱力し、更に茹ってしまいそう。
躊躇い、恥じらい。
そんな物要らない。
ドクドクと音を鳴らす心臓を忘れたくて、小さく口を開いた。
おずおずと、濡れた舌を差し出すも、合わせられた瞳を閉じることが出来ず、頬が羞恥に染まる。
いつ以来だろう、こんなに主導権を握られたのは。
いつもは俺が求める方。
キス、キス。

「‥も、早っ‥‥ん、ぅ」

焦れて抗議しようとすれば途端に重なる口唇。
するりと俺の咥内に入り込んだ舌は、驚く程に熱く、情熱的だっだ。
口を一杯に開いても、まだ足りないと言うように俺に噛み付くジャッカル。
反射的に逃げる舌を捕まえて、深くまで絡め合い、そして吸い上げる。
ざらりと艶めかしい感触に鳥肌が立った。







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