□さよなら、僕の
2ページ/5ページ









さよなら…僕の初恋 眩しすぎた季節










「卒業してから雪を何回見たんだろう」









俺が立海大附属中学校を卒業してから10年が経った。当然の如く進学した立海大附属高校を卒業してからさえ、もう7年。
25歳になった俺は、町の小さなケーキ屋で働いている。情の厚い店長にスカウトされての事だった。小さな店だが、しかし人気のある店。子供達がケーキを買いに来る度、自分の学生時代を思い出さずにはいられない。









「流れた時間と距離で降り積もる切なさ」









俺のダブルスの相方であるジャッカル桑原は、中学卒業と共にブラジルへ帰った。あいつはあいつなりに事情があるらしい。
そう考えてみると、もう彼此7年も会っていないことになる。最初の頃は文通や電話をしていたものの、やはり男子。手紙をちまちまと書き続ける事など出来なかった。覚えていないが、彼が止めたのか俺が止めたのか。今となってはどうでも良いことだ。
電話に至っては勿論、国際電話など驚異的なお金が掛かるらしく、親父に殴られた回数なんて数えきれない。そんなこんなで電話をする回数も減り、現在音信不通。
小学生の半分くらいと、中学時代のたった3年間、そんな短い友人なんて、こんなものだろうと思った。でも、俺は、









「アルバムにしまった あんず色の恋心」








俺は、ジャッカル桑原が好きだった。同性である彼を愛しいと思った。
ダブルスを組んでから気が付いた彼の優しさ、暖かさ。こんな人間が居たのかと、彼に出会えた立海大附属に感謝さえした。
好きで好きで、彼にかまって欲しくて、我が儘ばかり言っていた気がする。
それでも尚、彼は笑って許してくれた。
笑いながら「ブン太」って呼んでくれて、きゅうと胸が痛くなったのを覚えている。
幼い俺は、中学生ながらに彼を一生愛していけると真剣に考えていた。









「甘いだけなんじゃなくてちょっとすっぱい涙」










でも、俺は男で、彼も男で、臆病な俺は告白なんて出来なかった。この関係が崩れるくらいなら、何もない方が幸せ。
ただただ、甘く緩い友情に浮かんで、ジャッカルの優しさに浸っていた。












次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ