□さよなら、僕の
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「もう少し…もう少しだけでいいから
勇気があったならこの想いを伝えられたのに」









一度だけ、本気で告白しようとした事がある。確か2年の部活帰りだったと思う。自慢じゃないけどモテる方だったから、告白なんて初めてだった。軽い気持ちで考えていたのに、いざとなると心臓が死にそうなくらい跳ねて、結局言えずじまい。不思議そうな顔をするジャッカルに、無理矢理微笑んだ。









「今でも君を想うと胸が熱くなるよ」








驚く事に、俺は今でも彼女が居ない。高校時代に何人かと付き合ったが、誰とも長続きしなかった。そして彼女達には決まって「誰を見てるの?」と問われる。あぁそうだ。俺は君を見ていない。遠い遠いジャッカルを探しているんだ。









「今でも好きと言えずに数えられない季節」








無意識に、ジャッカルを探し続ける日々。神奈川もまぁ都会だから、それなりに外人の数は多い。商店街でも、公園でも、黒い坊主を発見すると胸が高鳴る。あれから10年。今も坊主である保障なんてどこにもないのに。
彼がこの神奈川に戻って来ていることを願い、10年間言えなかった、たった二文字を心に描いた。









「アルバムを広げた様な 便り耳にした」








その知らせを聞いたのは、柳生からだった。彼は外資系の仕事をしていて、今回はブラジルに行ったらしい。そこで偶然ジャッカルに会ったとの事。
俺も外資系の仕事をしてれば良かった、なんてバカみたいな事考えた。









「遠い異国の街で幸せ掴んだと」








何て皮肉なんだろう。柳生はそれを気まずそうに話した。学生、俺がジャッカルを好きだったのは周知の事実。知らなかったのは妙な所で鈍感な当人だけ。アホみたいにアピールする俺はあいつの目にどう写っていたのか。
柳生は、俺がジャッカルを引き摺っているのを知っていた。別に付き合っていた訳ではないが、それ相応にはベタベタしていたと思う。だから、だからこそ、柳生は至極気まずそうにそれを話した。
「ジャッカル君、御結婚なさるそうです。」
あぁ、何て皮肉なんだろう。















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