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□甘くて赤い照れ隠し
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とは、言っても。
「で、赤也。逆チョコって男女逆になるだけか?」
「何スか、やっぱ興味あんじゃないッスか」
「うっせ」
「い、いだっ!殴る事ないっしょー!ったく、そーッスよ。逆なだけッス」
拳を振り上げる俺から逃げる為赤也が部室へ全力疾走したのが5分前。案の定部室へ1番乗りした俺達は、いそいそと更衣を行っている。
「そんだけ?つまんね」
「女子にとっちゃ嬉しいんじゃないすか。ってかアンタも良い加減さ!」
下を向いてボタンを留めていると(どうも苦手な作業だ)、赤也が急に声を荒げた。顔を上げ赤也を見れば俺を指差している。
「あんだよ?」
「ジャッカル先輩にあげたが良いッスよ!」
「はぁ?なんでだよ」
「それは、」
赤也の言わんとする事を纏めると
・毎年貰ってるのにあげないのはおかしい
・丸井先輩は日頃の感謝をすべきだ
・ジャッカル先輩も意外とモテるから予防
ってゆー事らしい。大体丸井先輩女役なんスから!なんて言い出した時には殴ってやったが。
「じゃあ先輩女じゃないなら今年こそ逆チョコであげるべきっスよ!」
「うー…そっか?」
「はい!ジャッカル先輩喜びますって!」
ね?なんて人懐っこい笑顔浮かべられりゃ断る事なんて出来やしない。まぁ料理は好きだし得意だし、ジャッカルの事も勿論好きだし、考えてみればそっちの方が断然素敵なバレンタインに思えて来た。
「じゃあ、つくっかな!」
「っしゃあ!余ったの下さいね!」
「ばあか、調子に乗んな」
「えー!」
「何のお話ですか?」
「うっさいのぅ」
発展しそうだったその話は、柳生と仁王が部室へ入ってきた事で終わった。だってこいつ等に知られちゃ面倒だもん(特に仁王雅治14歳)。仁王は暫く不審そうにこちらを眺めていたが、柳生にたしなめられて仕方なしに視線を自らのロッカーへと移した。
その後は次々に部員達が帰ってきて、それ以上赤也とその話題について話す事はなかったが、帰り際に彼が自分に寄越したウインクを俺は忘れない。
「ジャッカル帰んぞー」
「おう」
有りふれた日常の中に、非日常が一つ。
いつもの帰り道が、ほんの少しだけ明るい気がした。
(まぁジャッカルと一緒にいるだけで、俺的には帰り道もショッキングピンクなんだけど)
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