□甘くて赤い照れ隠し
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「ったく相変わらずすげえな」

「へへ、だーろい?」

時は流れて只今バレンタイン当日の放課後だったりするのだが。毎年この日だけはチョコを渡しに来る女子の所為(お陰?)で部活は休み。真田辺りは非常に不本意らしいが、仕方ないだろう。とにかく立海テニス部員の人気は尋常じゃないのだ。部活なんてまともにやってられる状況じゃない。それ所か生命の危機すら感じるらしい(仁王談)。

「良かったなー」
「おうよ!お前はいくつ貰った?」
「んーブン太の半分いくかいかねぇかくらい」
「結構貰ってんじゃん」

早い放課の後は、俺んちの近くの公園にジャッカルと2人で戦利品を持ち寄った。ベンチに腰掛け袋を広げ、中身を吟味する。ジャッカルがたくさんチョコを貰うのは面白くないが全部俺にくれるので目を瞑ってやる。

「お、これ美味そう」
「おい!俺のだっ!」

2人でごそごそと包装を解きながら中身を確認していると、ジャッカルが嬉々とした声を上げた。彼は甘い物が得意じゃないってのに他の女が作ったモンに心奪われやがって、何かムカつく。

「いやこれ俺が貰った…」
「イコール俺のだろぃ?」
「…はい。」

理不尽だとは分かっていたが、どこの馬の骨とも分からない奴が作ったものなんてジャッカルに食わせられない。ココアパウダーのかかった丸いそれを口に含むとチョコレートの甘さの中に苦味を感じて、改めてそれがジャッカル宛てだと言う事を再確認させられた。

「うまい?」
「んぅ、にがい。けど、うまい」
「何だよそれ。まぁうまいなら良かった」

ほら。
俺が物を食って笑うたび、ジャッカルは至極幸せそうに笑うんだ。だから、時々(じゃないかもしれないけど)俺は我が儘になってしまう。まぁ俺の我が儘は全部食い物関係だから可愛いもんだけどな。自分で言うなって?うっせーよ、ほっとけ。

「ジャッカルも食いたい?」
「いや構ねぇよ、お前が食ってんの見てた方が楽しい」
「ばかじゃねーの!おら、食いたいんだろぃ!」
「は、いや、じゃあ、食いたい」

素で恥ずかしい事をさらっと言ってのけるジャッカルに頬が熱くなるのを感じたが、バレたら嫌だったからそれを隠す様に自らの背後にあった箱を突き出した。










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