□くだらないのかもしれないけれど、
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「だってそうだろぃ。お前浮気したんだぜ」
「でも、俺が好きなのは、ブン太だけだ」

突き放すような事を口にすると、ジャッカルの瞳が先程より不安に揺れる。彼のはいつの間にか膝立ちになっていて、暖かい両手は俺の肩に置かれていた。布を通して心地よい熱がじんわりと染み込む。

「良い機会じゃん。俺らももう子供じゃねぇし」
「本当に悪かった。もう絶対しない、だから、別れるとか言うなよ」

ジャッカルの凛々しい眉はきつく眉間に寄せられて、切れ長の目はもう不安と言うより恐怖の色が浮かんでいる。両肩にある手が更に力を込めた。
浮気した、なんて言ったらこんな展開になる事くらい分かっていただろうに、何故自分から墓穴を掘るのだろうか。目の前のジャッカルを見ながらそう思った。


でも同時に、その答えはとっくに分かっている、とも思う。それはジャッカルが優しいからだ。今回の浮気も相手が必死に頼んだのだろう。優しいジャッカルは、女の子である相手に恥をかかせられなくて、仕方なく抱いた(と、信じたい)。そして俺にはもっともっと優しいから、黙ってられなかったんだ。
何より、自惚れでなくジャッカルは俺の事が好きだ。そう思ったら苦悶の表情を浮かべるジャッカルが、何だか可笑しく思えてきて、自然と笑いが零れた。
結局の所両思いだったら、別れなくて良いんじゃね。
そう考えて、女は男のこーゆー適当な所を嫌うんだろうな、と妙に納得した。

「ったく、今回だけは許してやる。お前が俺にベタ惚れなのは知ってっからな」
「ブン太!……サンキュー、いや、本当すまねぇ。ありがとう」
「ただし!」

俺がジャッカルに微笑んでやると、彼も途端に強ばった表情を崩した。男前なハーフ顔がへにゃりと緊張を無くして非常に残念な事になる。

「詫びとして、これから1ヶ月、昼飯代と晩飯代はお前負担な」
「う、…了解。俺が悪いんだしな」

ジャッカルに拒否権なんてある訳なく(当然だろぃ)、釘を刺すように俺が人差し指を突き出すとジャッカルは苦い顔をしたが頷いた。その後、そのくらいで許してくれんなら感謝しなきゃな、とジャッカル笑う。

「それと!」
「まだあるのか…、」

笑顔からすぐに諦めた表情で俺を見つめるジャッカルに、俺は今日1番の笑顔を見せて言ってやった。









「お前に染み付いた女、俺が消してやるぜぃ」










ジャッカルの首に両腕を巻き付けてこちらへ引き倒したのだ、何をするつもりなのかなんて、聞かせない。










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