OR

□ぼくのつうしんぼ、ひとえまる
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「僕に恥をかかせたこと、ですよ!」
「は、俺、何もしてね…」
「うるさいうるさいうるさい!周りを見てみろ!僕たちが見せ物みたいになってるじゃないか!」

どかん。あ、何か山が噴火した音が聞こえた。何故かは知らないが俺は観月を怒らせる天才なのかもしれない。観月は顔を真っ赤にしてぷんすか怒りながら俺達を呆然と眺める外野を指差した。その途端彼らは慌てたように俺達(というか観月)から視線を外し、ぎこちなく各々の作業を開始する。まぁ彼らが興味を失った振りをして、聞き耳を立てているのなんて当然のように分かるのだけど。というかここは俺のクラスであるのだから、クラスメイトたちを邪魔者扱いするのは止めてほしい。なぁ、観月。

「分かった、分かったから部室行こうぜ。そこで話聞く」
「なっ、何であなたに指図されなきゃならないんですか!」
「頼むって、な」
「……………ちっ、」

こいつって本当は育ちが悪いのではなかろうか。俺に聞こえるように舌打ちしたあと、観月は歯痒げに親指の爪を噛んだ。どうやら相当苛ついているご様子。俺は面倒臭いことになったなと、正直全てを柳沢に任せたいなと、そんなことを思いながら観月の背を手で促して教室を後にした。これにて巻き込まれたクラスメイトの救出は完了である。教室のドアを潜る際ちらりと見たクラスメイトの表情は、どれも興味のあまり爛々と輝いていたというのは観月には黙っておこう。





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「………お前といると、調子が狂う」
「えっ、あ、あぁ、すまん?」
「何で疑問系なんですか」


その後の観月はまぁいつも通りに不機嫌だった。どうにか機嫌を直そうとあれやこれや彼に話を聞いてみると、どうやら彼は俺に、何か言いたいことがあるらしい。だったら言えば良いと、何度も頼んだが観月は頑として口を割らなかった。それを俺に伝えるのは口惜しいから、と、本当に憎々しげに言われたんじゃあそれ以上何も聞けないに決まってる。

「もう少し利口になれ、このバカ。そうしたら教えてやる。それまで大人しく僕に怒鳴られてればいいんだ」
「………へーい、」











部室の机に沈んだ俺を横目に、観月は不機嫌を一瞬だけ引っ込めて柔らかく笑んだ。俺は天使がいると、そう思った。















end
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