連なりの氷晶

□encounter◇出会い
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−−−−それはある朝の事だった。
俺はいつもより少し早い時間に電車に乗った。
普段は自転車通学の俺だが、今日は生憎の雨で自転車では行けなかった。
そのため、いつもは乗らない電車での登校をしている。

気がつけば時刻はいつもと同じ時間。

−ふと、あの日のあの事故もこれくらいの時間帯だったと昔の記憶が脳裏をよぎる。


……………俺があの時、あいつを止めていれば…。

嫌な思考を振り払うかの様に己の頭を振ったその時だった。


視界の端に嫌なものを見かけてしまう。

−−−−痴漢か。

俺は特別正義感の強い方じゃない。
目に入ったからと言ってわざわざ声に出すのも面倒だ。が、気分が悪くなったのも事実だ。こちとら朝はただでさえ機嫌が良くないというのにあまり気持ちの良くないものを見せられたのではたまったもんではない。
俺が声を出そうかと悩んでいたその時、

「そこの男性!何をしている!」

すぐ近くにいた女が先に声を出した。
歳は俺と同じくらい。身長はこの年頃としては少し高め。俺と同じ制服を着ていて、赤毛が印象的な整った容貌をしている。
そして今はその容貌を憤怒に歪めている。

「あなた!今そこの彼女に痴漢行為をはたらいていただろう!」

女の声を聞いた周りの他の乗客もなんだなんだと好奇と、男に対する蔑みの視線をこちらに向ける。

女は行為にあっていた同世代くらいの少女を自分の背に庇うと男から距離をとった。

「最悪の行為だ。彼女に謝れ。」

確かに。ともかく俺が口出しをしなくても事が解決しそうなので俺は一息ついた。
−−−面倒事に巻き込まれずに済んだ。
そこだけは女に感謝した。が−−−

「おいおい、嬢ちゃん!いきなり人を痴漢呼ばわりだなんてひでえじゃねぇか!
今のはたまたま手が当たっちまっただけだぜ!」

嘘だ。俺は確かに見た。あれは当たったなんてもんじゃない。

なぁ?と、男が少女に問い掛ける。だが、少女はあまりの羞恥に答えられないでいる。それをいい事に男はもう一度女に抗議した。

「ほら、この嬢ちゃんだって何にもいわねえじゃねぇか。あんた一人が俺を痴漢扱いしてもなぁ…。」

明らかに圧されている。だが、女は諦めなかった。少女に優しく問い掛ける。

「なぁ、大丈夫か?辛いのは分かるが、どうか本当の事を言ってくれないか?」

だが、少女は何も言わない。それもそのはず、男が女の肩ごしに少女をにらんでいるからだ。

「ほら、俺は何にもやってねぇ。あんたが勝手に騒いだだけじゃねぇか。
とんた濡れ衣だ。俺に謝って欲しいぜ。」

しかしなおも女は諦めない。

「今は彼女も混乱して喋れないだけだ。私は絶対に見たんだ!」

その顔が幼なじみだった少女が俺を庇っていた時の顔と一瞬ダブった。

「だから言ってるじゃねぇか!そう言ってるねがあんた一人じゃ「一人じゃなければいいのか。」

今にも口を開いて言い返そうとしている女の顔も男の顔も少女の顔も、はては周りの他の乗客の顔も突然の闖入者−俺−の登場に驚きを隠せない。

「俺も見たって言ったらどうなる?」
俺は内心しまったと思ったがもう後には引けない。
と、ここで先程まで口を閉ざしていた少女が俺の乱入に合わせやっと口を開いた。

「そっ…その男の人です!その人に痴漢されました!」と、男を指して言う。

「やはりな!」と、女は得意顔。
が、ここで油断したのが良くなかった。
男が逆上して狭い車内にもかかわらずこちらに飛び掛かってきた。咄嗟のことに身動きが出来ない少女を女が庇う。

−−マズい!

男がもう少しで彼女達に襲い掛かろうとした間一髪、俺が間に合った。
少し腕を引っ掻かれたが構わない。手にした竹刀で男の胴体を横薙ぎにする。

男は吹っ飛ばされて気を失う。と、そこに電車の車掌が駆け付けて男を拘束する。

車掌に感謝され周りの乗客からは拍手が出たが俺はちっとも嬉しくない。

−−−俺らしくもねえ。

背中をつつかれて振り向くと女が立っていた。

「あなたっ!腕から血が出ているぞ!」

言われて腕を見ると、確かに、さっき男に引っ掻かれたあたりから血が流れていた。

「別に。この程度大したことない。舐めときゃ治るだろ。」
「いいや、それは良くない。これを…。」

と、女はハンカチを押し付けてくる。
遠慮したが聞く耳を持たないらしい。仕方なく受け取る。

「本当にありがとう。私一人では逃げられていたかもしれない。あ、そのハンカチは返さなくていい。ところであなたは剣道部か?」

「ああ、一応そうだ。でもなんで。」

「今度またお礼をしたいと思ってな。私と同じ学校だろう?じゃあ私は急いでいるのでこれで。」

と、彼女は立ち去ろうとした。

「あ!おいお前ハンカチ!」

「返さないでいいと言っているだろう!
それじゃあ、また!」

「待て!お前、名前は?」

彼女は階段の途中で立ち止まり、こちらを振り返る。当然俺が彼女を見上げる形になるので、スカートの中が見えそうになるが、今は捨て置く。

「セシリー。セシリー・歩・キャンベルだ!じゃあ!」

と、彼女は階段を駆け上がり走り去る。

「変わった名前だな…。ハーフか?」

と、呟いたところではたと、今の時刻に気づき−−

「やっべぇ…。遅刻だ!ハンニバルの糞教頭にどやされる!」

急いで俺も走り出した。

俺達の通う高校−−−公立交易高校へ。










初小説!駄文ですみません。なんかルークが原作の出会いより優しくなってしまいました。今後はこの学パロ、いきなりユーインとかアリアとか最初から出てきますが、気にしないで下さい。
 

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