NOVEL

□人間コンプレックス
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目の前にそびえる大きな影。





―――シロガネ山





此処に篭る少年のことを最早知らない人なんて居ないだろう…



3年前…



最年少で各地のジムを制覇し、チャンピオンおも打ち倒した、あの少年のことを…




―――『シロガネ山のレッド』。




伝説と化したその存在は、3年も経った今でもあらゆるトレーナーの憧れの的となっている…




レッドはこの山の頂上にそれこそ3年前から篭っている。





それも、『半袖』で。




(全く…わかんねぇ)


本人曰く、『自分より強いトレーナー』が現れるまでは山から下りないそうだ。





変なトコに頑固だと1つため息をついて大きい荷物を抱えなおして足を進める。




カントーとジョウトの間にそびえ立つこの山は野生のポケモンも気象も並大抵のものではない…。

故にバッジを全て集め、強さを認められた…

ほんの一部の人間しか出入りをすることが許されていない。


つまり。

レッドと戦うトレーナーは少なくともリーグを制覇したつわもののハズなのだが…






(なんでかてねぇのかな…)


それほどアイツが強いって事はわかってるつもりなんだが…









――――――――――――――――――――――――――――


ドサッと相棒のピジョットが地面に伏せる。




「…グリーン、」



「…結局お前には勝てねぇんだな…俺。」




ありがとうと呟きつつボールに戻す。


(今までも、そうだ。)


旅の途中何度も何度も挑戦したバトルも





今も――――。





さっきなったばっかだ。




――今まで見続けた‘夢’




――――チャンピオン





「あーぁ…強くなったと思ったのにな…」




今まで勝つことなんてできなかった俺がこんなこと言うのもおかしい話だが…






(悔しかった)



そう思うと溢れてくる涙を我慢するのに精一杯だった俺は、その後にレッドが口にした言葉を理解するのに時間がかかったんだ。














目の前に現れる赤い影


白い息を思い切り吸い込んでかじかむ口を開く。



「レッド」


「…待ってた。」


「ったく…なんで俺にこんな雑用頼むんだよ…」



まぁ、わかってんだけど。








俺は他人が嫌いだから――――
山に篭るけど―――


グリーンのことは

いつでも待ってるよ…

(幼馴染だから言えること)


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