NOVEL

□日常的茶飯事
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―――――ビュォオオ




今日の山の天気



『最悪』。





「あ、お帰りレッド。」


「…うん。ただいま。」


「ホラ、タオル。さっさとリザードン出して暖まれ。」



まぁ、俺がいたし、あんまり寒くは無いんだけどな。


タオルを渡しながら言うと、レッドはバツの悪そうに首を振った。


「それは…できない。」


「はぁ!?な…なんかあったのか…?」


リザードンを出せないなんて…

と慌てる俺を見てクスクスと笑うコイツ。



(たいしたことじゃねぇんだな…)


なんだか一本盗られた気分だ…。



「リザードンが、」


「ん?」




「暖めるの疲れたって。」


「……なんだそりゃ」



またアホなこと言い出したぞコイツ。
暖めるの疲れたって…


レッドはどうすんだ…?!


全く、親を暖かくする以前に疲れたなんて、弱音にも程がある!!


なんてブツブツ言いながらこのあとどうするか考えていると、ある程度からだを拭き終わったレッドが上着を脱ぎ始める。




「な、にやってんだ!!馬鹿かお前は!!なんで風邪引くとわかってることをやろうとするの馬鹿!!」




大声で怒鳴り散らし始めたので、ビクッと肩を震
わせたレッドは、軽く眉間に皺をよせて耳を塞ぐ動作をしてみせる。




「聞いてんのか!」




「…聞いてる。…けど、こうしないと暖まれない。」



「っは…っ」



なんのこっちゃ…

と思うが否か、脱いだ服を畳むことなくほっぽり投げて、グリーンの着ている上着のチャックを下げる。


「うわぁあ?!ちょ…っなにやってんだ!?」


「…こうやって…」



一人慌てる俺をよそに、チャックを下げて全開になった胸元にくっつく。




(っ…めてぇえええッ!!!)




いくら厚着してきてるからって、今の今まで最悪な天候の中長時間外にいた人間を抱きすくめるには少々薄いかな、と。






「れっ…どッ!?」




「…あったかいね、グリーンは…」


そう言って首元に顔を埋めるレッドの身体は、何て言うか…


「…おい…」


「早く。」


「な、なんだよ…」


「チャック。…上げて?」




〜〜〜〜ははーん、成る程…



そういうことなら喜んで。



「素直じゃねーな。」


「…これくらいでいいの。」


「はいはい。」




そう言って細い腰を抱きしめる。


もうレッドの体温も心地いい温度と化していて、無意識のうちに安心する。




















ここは人里離れたとある山。





そこに住むは伝説





と、その恋人―――。





ありえないようで何処にでもあるような『恋の形』。









(……)

(寝やがった…)


全く…こいつの顔は何時も何時でも傍にあって…


それでいて貴重な…なんという‘日常的茶飯事’








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