NOVEL
□がらくた
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グリ→レ
甘い…のかな。
幼児グリーンが先生のレッドにアタックする話。
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俺は、この仕事を気に入っている。
むしろ好きだ。
『子供』は嫌いじゃないし、面倒を見るのだって、そんなに苦じゃない。
実際俺だってもう20。
この仕事に就いたのは2年前の事だし、板についているのも確かだ。
そんな俺が受け持つのは‘にじぐみ’。
‘くも’‘そら’…に続く、幼稚園最後の組。
と言っても後数ヶ月で、この組の子供達は小学校に駒を進めることになるが…。
ふと机から顔をあげると、視界に入った時計の針が開園の時刻を指そうとしていた。
手に持っていたペンを机に転がして立ち上がる。上着を掴むと門を開けるべく足を進める。
園児用に造られた頭身の低い下駄箱を横目に玄関を出ると、朝ならではの尖った空気を感じる。
この頃最高気温が低くなり、秋に向かって進んでいくこの季節。
このなんとも言いがたいすがすがしさが、妙に気持ちよかったりする。
ふと門に目を向けたところで動きが止まる。
(…誰か、居る…?)
こんな早い時間に…?
「せんせぇ!!」
突然発せられた声。
…こいつは…
「――――グリーン…?」
ヘヘーっと顔を緩ませるこいつは、にじぐみのクラスメート。
何故か俺になついていて、なにかしらくっついてくる。
やんちゃで、ケンカもよくする…幼児のモデルと言って良いほどの子供。
さらに言うなら女の子達にモテモテな、いわゆるイケメンというやつ。
そんな彼が、なんでこんなに早く来たんだ。
こんなに寒いのに。
「なんでこんなところに…いるの?」
「ひみつー。なぁ、あけないの?」
にたーっと口元を歪ませてパタパタと足を踏む。
いくらやんちゃで、女の子達にモテモテだからって、やはり子供は子供なんだよな…
ガチャンと耳に響く音がして門の鍵をあける。
とたんに駆け込んでくるグリーンを抱き留めて抱えあげる。
と、
「おればガキじゃねーから抱っこすんなー!!」
なんて怒られた。