NOVEL

□がらくた
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やっぱり子供じゃないかと笑いながら地面に降ろしてやると、ジッと見つめてくるグリーン。


「…な…なに?」


「しんちょう。」


身長?

が、どうしたというのだ。




首を傾げつつ、冷えてきた体に気付き、グリーンの手をとってゆっくり歩を進めはじめる。



「せんせ、しんちょう、いくつだ?」


「身長…?んー…175cm…くらいだったと思うけどな…」


「ひゃく…!んじゃあおれまだまだじゃねーか!!」



なんだ…?

気にしてるのか…?

自分の背を?











(可愛いとこもあるんじゃん…)



「っ!!いまわらっただろ!!」


「笑ってない笑ってない」




いつもからかったりされてるもんだから、なんだか嬉しい…






「…おれ、せんせーのこと、いつかこす!!そいで……」





その後は小さすぎて聞き取れなかった。

だけどなんだか可笑しくて、くすくすと笑うとまた怒られた。










「なぁ!!みたかいまの!!




せんせぇ!!」










「…はいはい。」




あの朝の後から、前より突っかかってくる度数というか…量が増えた。




急激に。





今もそうだ。



ただ大きな的にダンボールで作ったボールを当てた。


だけなのに…



前はいかにも当たり前のように周りに自慢しまくって…






そんな感じだったハズだ…






「きいてんのか、せんせってば!!」



聞いてると返せばフフンと鼻を鳴らしてやっとどこかに走っていった…





(初めてだ…こんなに疲れてるの…)








その後も、もってきたパズルだの何だのに付き合って…

毎日毎日…







その繰り返し。















―――――――――――――――――――



ヒラリと目の前に散る桜の花びらに目を向ける。


何時もと違う、



自分の格好



めかしこんだ幼児たちの親



そしてその親に挟まれて幸せそうに微笑む






―――‘にじぐみ’の園児達…








今日は長い時間過ごしてきた‘幼稚園’での最後の行事。



‘卒園式’






俺が最後の組を持ったのは初めて。


だから挨拶をしてくる親に、ましてや今まで元気にかけてくる園児達になんて言葉をかけてあげればいいかなんて分かるはずがない。










「せんせい」



「…グリーン」




何時も…五月蝿いくらい突っかかってきたグリーン…


(…グリーンとも、…会えなくなるんだ…)






そんなことを思うと胸が熱くなった。





「ないてんの?」


「…泣いてない…よ」








ないてんじゃん…と何時もとは違う、困ったような、バカにしているような…

そんな笑みを零して手を握ってくるグリーンに、最早歯止めが利かなくなった。


恥かしくなって視線を合わせるためにしゃがんでいた足に、顔をうずめる。




「ねぇ、せんせい。」




「…なに?」




「おれ、せんせいのこと、‘大好き’なんだ」




「…ぐり、ん」




「さいごのほうとか、いろいろむりやり、だったかも、しれないけどね、」




ゆっくり顔をあげると、自分と同じように涙にぬれた、









笑顔








「ね、おれ、いつかせん、せぇおいぬいて、せんせぇがみとめてくれる、っくらいになったら









迎えに来きます









だから、」









‘まってて’







そう言って額に触れるだけの…


キスをして―――




(最後まで我侭だった、)

(だけどそれが)



(一つの‘楽しみ’になったのも)



(まぎれもない)



(事実。)










あまりにも小さい、些細なことも




最初はどうとも想っていなかったことも





こんなに長い時間積み重ねちゃえば




こんな大きなモノになるんだね





→後書き

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