NOVEL

□烏に良く似た
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黒い髪…

まるで漆黒の闇を閉じ込めたような。





紅い瞳…

まるで紅蓮に燃える焔を写したように。





傍らには常に『悪魔』と呼ばれた宝を携えて。




吹き付ける氷を気にも止めない。




独り孤独のようで、逆に迷惑がられる。




もの集めが得意な…







烏によく似た






ある人は‘子供’といい



またある人は‘仙人のような翁’といい





ついには


実はもう死んでいて、


‘幽霊’

として存在している人物…




なんて噂になるくらいだ。




『幽霊』…


確かにこいつは口数は少ない。


ただ、俺は幼馴染だからか、比較的話しかけられることは多い。



これはやっぱり幼馴染の特権だな…






さらにこいつは雪山に棲みついていた…




だから『幽霊』なんてのも、あながち間違いではないと思う。




でも実際そんな世間の所詮『噂の人物』は、何の変わりもないただの‘人’であり‘人間’である。


そんな人物はいま

俺の横で規則的な寝息を立てている。




俺はいつものように仕事を終えてやっと床についた…



こいつは山にいるはずなのに。


なんでとは聴かずともわかる。
たまにあるのだ。こんなことは。




「さびしいんだ」





部屋に入ってきたときのこの一言で、全てを俺に把握させたんだ。



そりゃ、言葉が通じるならわかって当然…




ええと、ほら。




つまりおれが言いたいのは




こいつが幽霊とか仙人だとか。




そんなの関係なくって




ただあえていうなら








色と性質と雰囲気






これが少し








烏に似てる、ただの餓鬼だってこと。







end






(つまり、いくら並はずれの伝説も、俺の前じゃあただの愛しい幼馴染ってやつ)






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