NOVEL
□願わくば…
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俺が初代最強といわれ…
さまざまな基礎を作り上げた…
それはもう昔のことで…
今ではもう……
願わくば…
眩しい光が瞼を照らし、俺はとあるポケモンセンターの一室で目を覚ました。
時計はもう朝の10:00を指していて、もう大分太陽は高く昇っている。
(…寝過ごした…)
ふと、横にあった温もりが消えていることに気づき、急いで着替えに手を伸ばした。
預けていたポケモンを受け取ると、昨夜到着したばかりの町中に足を向ける。
「にいちゃん、珍しいポケモン連れてるね〜…カントーの人かい?」
道行く老人に声を掛けられ、ふと足を止める。
「ピカチュウかぁ…可愛いもんじゃの〜…」
「…俺の相棒…なんです。」
「ほ〜…いいご主人を持ったの〜」
ピッカ!と返事をする相棒におもわず口元が緩む。
自分だけでなく、ピカチュウも同じことを思っていてくれたという事実に胸が温かくなる。
「そうだ…おじいさん、いつから此処に…?」
「今朝から居るが…探し物かえ?」
引き止めてわるかった…と零す老人に首を振り、ツンツン頭の無駄にイケメンな人物を見なかったか訪ねる。
「背のたかい兄ちゃんか!!通った通った!この通りをまっすぐ進んでいったから…広場じゃないかね…?」
老人に礼を言って広場へ向かうと、なんだか妙な人だかり…と共に地鳴りが襲う。
「ウィンディ!火炎車!!」
「負けるなペンドラー!かわしてじしんだ!!」
片方は俺のよく知る連れ…
そしてその相手は…
「イッシュの英雄…?」
確か新聞やら電光掲示板で流れていた人物…
(俺に似てるってグリーンが言ってた奴…)
名前は確か…
「つえーな…流石イッシュの英雄…‘ブラック’!!」
「そちらこそ…カントー最強のジムリーダー…グリーンさん…
完敗です…」
どうやらグリーンが勝ったようだ。
周りから拍手やら歓声やらが飛び交う中で、俺はグリーンに近づく。
英雄なんて言われていても所詮子供…ってところか…?
「…お、レッド!!来てたのか!!」
「…グリーン、お疲れ。」
グリーン曰く、朝早く起きてしまったので散歩がてら広場に来て…英雄とばったり会ったらしい。
どうやら満足なバトルだったらしい。
俺ももう少し早く来ればよかった…なんて考えていると、
「伝説のレッドさんと、グリーンさんでは…どちらが強いんですか…?」
なんて言うから、此方にもスイッチが入ってしまうというもの。
「久しぶりだな…レッド…」
「…容赦はしないよ…?」
癖になった、俺が帽子を深く下げる動作と一緒に、腰につけてあるボールから一匹のポケモンが飛び出る。
「…いくか…?カメックス…?」
当然といわんばかりに鳴くカメックスに、ナッシーを繰り出すグリーン。
…本当に、こいつとのバトルはワクワクする…
ブラックの、‘開始’の声で、カメックスとナッシーのハイドロポンプとソーラービームがぶつかり合った。
そのバトルは周りの観客を魅了するほど激しく…
美しい戦いだった。
この地方にはいないポケモンだからかもしれないが、妙に惹き付けられるものがあった。
俺は相討ちで倒れたカメックスをボールに戻しながら、ふと思う。
今まで山に籠っていて、こんなに堂々とバトルできるなんて、思ってもみなかった…
いや、確かに望んでいたんだ。
新しいなにかを俺に教えてくれる人物を。
そして俺は今此処に…
故郷から遥かに離れた未知の世界に。
きっとまだ何処かの世界には、まだまだ多くの未知が眠っていて…
そしてこのイッシュ地方にも新たな伝説が現れたように…
また新しい伝説と共に
新しい物語が始まるのだろう。
「…行け…ピカチュウ…」
俺は初代伝説マサラタウンのレッド。
もし叶えることが可能なら、
これから生まれ行く幾多の伝説を…
この目に収めてみせよう
、
と――――――
(本を書こう―――)
(厚い、大きな、世界にたった一冊の)
(旅の歴史を集めよう)
(これから歩きだす)
(夢が道に迷うことの無いように―――――)
ポケモン15周年Congratulations!
(遅くなった…)