イザシズ

□夏の憂鬱
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「プールに行こうよ!」

あまりにも唐突すぎるその発言に、俺は口をぽかんと開けた。

「………………はぁ?」

面倒くせえと言おうとして臨也の方に目を向けるともう準備し始めているらしく、シズちゃんの海パンどこかな〜とかいいながら勝手に俺の家のクローゼットを漁っている。

いつもなら殴り飛ばしているところだが、暑くてそんな気も起きなかった。

それによく考えてみたら、こんなに暑いんだからまあプールに行くのも悪くないかな、なんて考えたから。

「全く…シズちゃんは海パン一枚も持ってないの?」

臨也は一段落捜し終えたらしく、クローゼットの扉を閉めながらそう言った。

これだから非常識人は、とかいいながら俺のバスタオルやらなんやらを臨也があらかじめ持ってきていたバックに入れ、玄関に向かって歩きだした。

「…お前始めっからプール行くつもりで来たのか。」

珍しくキレずにまず疑問を口にだした。

「ははっ、ばれた?」

とりあえず言い方がムカついたので、殴ることにした。

自分の腕を感情のなすがままに、振り上げたが、あと一歩のところでかわされてしまう。

まぁ当たったところで急所は外しているから大事には至らないだろうけどっていうのはあいつには秘密。

少しの間、蹴ったり、殴ったりしていたが、肌に纏わり付く熱が欝陶しくなって殴るのはやめにした。

なにもなかったように歩き出すと臨也も後に着いて歩き出した。

俺は基本的に熱しやすく冷めやすい。

「暑いねぇー…」

臨也は、はぁと溜息を着いた。

俺は返事を返すのも億劫になって無視していた。

「本当は新羅も誘おうかと思ったんだけどさあ…」

こいつが誘おうとしたなんて珍しいこともあるんだな、なんて考えながら適当に話を聞き流していた。

「二人のデートに水差されたくないし。」

で、デート……

俺たちは一応付き合っているわけだし、二人で出掛けることもある。

でもデートと言われたらなんか恥ずかしい。

「手前は馬鹿か…」

少しだけ頬が熱くなったのは猛暑日のせいだということにしておく。

「はは…シズちゃん可愛い。」

臨也が小さい声で呟いたその声は俺には聞こえなかった。

「………それに首無しがプールに表れたら皆どうするだろうねえ…」

一瞬なんでセルティが、と思ったが、新羅を呼んだ時点でセルティが来ることは、ほぼ確定に近いだろう。

俺の脳裏には割とスタイルがいい、ヘルメットをとったセルティと、それを見て呆気にとられる人々。さらにそれをみたセルティが、ジェスチャーで新羅に、だから私はこない方がよかったと伝えている姿が頭に浮かんだ。

心の中で苦笑いして確かにな、と呟いた。

「……シズちゃんに色々したかったんだけどねぇ…」

色々の意味はよくわからなかったが、きっと新羅が来ていたら俺は屈辱的な目に逢っていたのだろう。
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