エレメントハンター

□I can't live without you.
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アリーが死んだ。




目の前で

光に包まれて、

真っ白な光が爆発して

轟音と地響き。

その中に包み込まれて消えてしまった。

少し前まで、目の前にいたのに。

声が直ぐ傍にあって、
アリーの指が俺の腕を捕まえていた。
俺はそれを振り切って、暴走して、アリーが俺を助けた。
その所為でアリーが死んでしまった。
あんな爆発の中で生きてるはずが無い。
何もかも見えなくなった。




どうやって家に着いたのか、よく覚えていない。
ホミたちがなんとか励まそうとしてくれているのは分かるのに
どうやって笑って良いかもわかんねーんだ。
だって、俺の所為でアリーは死んでしまったのに、どうやって笑えばいいのか
全然わかんねーんだよ。


次の日にはニュースでアリーの殉職が世界中に放送された。


ああ、本当に死んでしまったんだ。

そう思ったら、もう笑い方なんてわかんなくなっちゃったよ。





何もかもが耳や目をすり抜けていって、聞こえているのに聞こえなくて
見えているのに何も見えない。
そんな空っぽな世界で、アリーがいないのに、俺が楽しんで生きていて良いはずが無いんだ。


ベッドに沈み込みこむと何処までも沈んでいってしまいたくなった。

はじめて、父ちゃんの飯を食わなかった。


だって、アリーはもう二度とおいしいものも食べれないし、笑ったり、遊んだりもできない。
あんなに優しくて、強かったのに。


俺の所為で、俺の所為で全部なくなっちまったんだ!!!!



俺がアリーの言うことを聞いていれば、アリーがあんなふうに・・・・



白い光が爆発する。




――――――――叫びだしたい。


でも、忘れちゃいけないんだ。

あれがアリーの最後なら、俺は忘れちゃいけないんだ!!

二人で洞窟から逃げるために貝の船で川にのった。
まともにしゃべったのはアレが初めてだった。

いいにおいしてた。

すれ違うだけでふわっていい香りがする女の人、
初めてあった。

アリーは強くて頭が良くて、いい匂いがしてた。
生きてたのに。
あんな近くで、しゃべってて笑って、どうして、俺なんか助けたんだ・・・。
俺は頭も良くないし、アリーのほうが全然世界の役に立つエレメントハンターだったのにどうして俺なんかを
俺なんかがいたから。
俺が泣いたって、怒ったってアリーは戻ってこないのに。
どうしてこんなにも鮮明に俺の中にいるんだろう。
香りも、捕まえられた手首の感触も全部覚えている。
アリーが好きだったのに。

「・・・え、あ」
ああ、そうなんだ。
好きだったんだよ。
アリーが好きだったからこんなにも俺は自分がゆるせねーんだ。





ぴぴぴぴぴ。


とつぜんアラートが鳴り響いた。
なんだよこんなときにもQEXかよ。
元素の消滅はいつだって突然だ。
人の死もそうだ。
俺はもっと強くならなきゃいけなかったんだ。


アリーの仇をとる。

そんで、そうしたら・・・・俺は。







* ****

研究所に行くと、まだホミもキアラも到着していなかった。
「なんだよおせーな」
そうするとユノがソファから顔をだして、
「呼んだのはレンさんだけですよー」といつもどおり間延びした声で言った。
「何で?俺一人じゃむりだぞ」
『QEXではありません。貴方には一番最初に会わせた方が良いとおもったのです』
「カー博士?誰に」



「私よ」
奥の部屋から現れたのは
「・・・んで?」
彼女はくす、と微笑んだ。
「酷い顔ね・・・レン。とにかく笑ってミライオレンジじゃ、なかったのかしら?」
「何で」
『彼女は同じチームのロドニー・フォードに助けられて一週間集中治療室に入れられていたのです。助かっていたのですよ』
「だって、ニュース」
「ええ、私のした行動が軍法会議にかけられて・・・重大な違反行為になってしまったのよ」
「違反?」
『貴方たちを助けるために、独断であの場に駆けつけたのですよアリーコナリーは』
「そんな・・・じゃあ、じゃあ本当に俺の所為で」
「いいえ、軍は貴方たちの存在をあのQEXを使って処分しようとしていたわ・・・そんなこと絶対に許せなかった。だからこれは本当に私の意思。
私は貴方があのQEXにやられてしまわなくて心から良かったと思っているのよ」
「ば・・・ばかやろう!!!なんで・・・なんで来るんだよ!!俺より自分のこと大事にしろよ!!だって死んだことになっちゃんたんだぞ」
「そうね・・でもそれは私の責任だから、いいのよ。それにね。わたしあなたのおかげでここに来れたんだもの」
「はあ?」
「涙を拭いて、レン。笑って。とにかく笑ってミライオレンジ。貴方が私にそういって微笑みかけてくれたから、
私は私を信じて大気圏を越えてこれたのよ。
あのままコロニーにいたら私、一生小さな部屋の中で籠の鳥のように一生を終えなければならなかったはずだわ。
ありがとうレン。だから笑って。」



「ち・・くしょ。俺にも言わせろ・・・ありがとうアリー。助けてくれて・・・。生きててくれてすげーうれしい」
「私も嬉しいわ」
「あ・・あのさ、それとあのその」
「え、なあに?」
「俺!!アリーのこと」



ぐ――――――――。






「え?」
「あ・・・・わり、腹・・・へった」

「なんですぅそれ。てっきり愛の告白かと思っちゃったじゃないですかー期待損ですう」
くすくす。
「何言ってるのよユノさん。そんなことあるわけないわ。ここには食べ物はあるのかしら?」
「用意はできますよ。インスタントでよければ。ここにはご飯を食べる人はいませんからねー」
「いいわそれで、ご飯頂きましょうかレン」
「・・・・おう。」


ちくしょー今チャンスだったのにー!!!

まあ、いいかアリーは生きてる。

それだけでいい。

くん。

あ。

やっぱり、アリーはいい匂いがする。

生きてる・・・匂いがするよ。

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