エレメントハンター

□あいたい
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せっかく気持ちよく寝ていたのに、パパが突然起こしにやってきた。

ゆさゆさと肩を揺さぶって、必死であたしを起こそうとしている。
そんでもって、良く分からないことを訴えている。

「玄関に有名人が立ってる!キアラに用事だって言ってるよ!!」

・ ・・有名人って何よ・・・ママでも帰ってきたの?

ママは有名人っていうより芸能人か・・・。
「キアラ起きて!パパどうしていいかわからないよ」
「うるさいなぁ・・・休みの日は寝てたいのー」
「起きなさい!!」
ばりっと布団を引っぺがすという強行に及んだパパにびっくりした。
しぶしぶ起きて、乱れた髪を手櫛で整えると玄関に向かった。
「もう・・・いったい誰」
がちゃ。
「おはよう」
「・・・おはようございま・・・!?」
ばたん!





思わず動揺してドアを閉めてしまった。
ちょっと・・・まって・・・。
心臓がばくばく鳴り始め、今完全に目が覚めた。
いや・・・でもまさかいるはず無いわよ・・・うん。
ありえないから・・・とどこか言い聞かせるように唱えながら恐る恐るドアを開いた。
「なぜ、閉める」
不機嫌そうな顔で呟いた人物は、確かに有名人で
良く知っている。
というか最近見たばかりだ。
「・・・なんでいるの?」
「会いにきた。君が言ったんだろう。来てもいいと」
「い・・・」
言った。確かに言ったけど。
昨日の今日でくる?




相手の行動力に呆然としていると後ろから肩を掴まれた。
ひょっこり顔を出したのはいくらか落ち着いたらしいパパだった。
「とりあえず、上がってもらったら?で、君は着替えてきなさい」
「え・・・」
着替え?と思って自分の姿を見下ろしてぞっとした。
寝起きのパジャマのままだ。
頭もぼさぼさだし。
信じられない!
「わあ!ごめ30分まって!用意してくるっあーあー」


「騒がしい娘でごめんね」
「いえ、突然訪問した私のせいですから」
「何も無いですが、こちらへどうぞー」
とか後ろでパパが案内している声に、変なこと話さないでよーと不安になりながら自室に駆け込んだ。

わあっ違う!
先に洗顔!
と部屋から飛び出し洗面所へばしゃばしゃがたがた音を立てながら何とか顔を洗うと
部屋に戻ってクローゼットを開け放つ。



最近買った一番新しい服どれだっけ?
ハンガーに掛かったワンピースやアウターをかき分けてカラフルな色合いの服を適当に引っ張り出すとベッドの上に放った。

た、たぶんこれが一番最近のやつ。
水色のワンピース。
一目ぼれして思わず買ってしまったカナリ女の子高めのやつだ。
そのせいで普段着にするにはもったいなく
かといってレンやホミと出かけるにはカジュアルのほうが楽で
結局しまいこんだままだった。
よし!とりあえずメインはコレ。
中は・・・パステルイエローのインナーをあわせて、うわっ!あと髪。
髪どうしよう。
編みこみ、お団子・・・そんな手間掛かるやつやってる余裕無い!
あいつせめて、連絡よこしてから来なさいよね!
女子は用意に時間掛かるんだから!!

結局いつもの髪型になってしまった。
帽子くらい持ってこうか・・・せめてリボンの色を変えるとか・・・。
鏡の前であーでもないこーでもないとコーディネートをくりかえして。
はっと部屋の時計を見て、もうすぐ30分を越えそうになってて慌てた。
待たせていることよりも、あのパパとロドニーを二人きりにさせていることに焦った。
やばい・・・ママの映画コレクションとか見せ始めたあげく人の小さな頃のアルバムを引っ張り出して鑑賞会しかねない!
急ピッチで仕上げをして、クローゼットの中からバッグを引き抜くと、いろいろ崩れてきたけど見なかったことにする。
帰ってきたら片付けよう。
ベッドの上も床もしっちゃかめっちゃかだ。
前日に連絡くれればもう少しましに用意が出来たにロドニーのやつうう!!
恨み言をぶつぶつ吐きながら、ほんのりと色付くリップを唇にのせた。
「むむ・・・よ、良し」
最後に姿見の前で確認。
くるりと回ってみる。
急ピッチで仕上げた割には・・・いいほうじゃない。
えと、靴は・・・玄関にブーツあったよね。あれでいいや。
慌ててリビングにかけていくと、思わずすっ転びそうになった。
あまりにも予想通りの光景が広がっていた。
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