長編小説『女神の盾』

□「わたしの、最高の…?」
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わたしがお姫さまで…

あなたは、わたしを守ってくれる騎士。

わたしの最高の友達―

けれど、あなたはわたしに背中を向けた。

「僕はこんな世界を望まない。君が犠牲にならなければ救われない世界なんて… このまま滅んでしまえばいい」

「信じてたのに… あなたのこと、最高の友達だって… 信じてたのに!!」

「僕の願いを否定したのは君の方だ。だから、僕も君の願いを否定する」

「待って…!」

引き止めようと伸ばした手が、宙を掻く。

「引き止めず、行かせてくれ。そして、君のために戦う騎士を叱らないで欲しい」

振り返りながら、黒い騎士さんは微笑んで…

でも、その笑顔は一瞬で消してしまう。

「僕の戦場は、ここじゃない―」

「待っ―」









ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ…


「………ぇあ?」

ベッドの中で目覚める、わたし。

当然そこには、あの黒い騎士さんの姿は無くって―

目の前には、見慣れた天井と抱き枕代わりに使ってるウサギさんのぬいぐるみ…

それは、いつもと変わらない朝でした。

「…これって、夢オチ…?」










「んで、和子はどーよ?」

ドライヤーとブラシで髪を梳かしながら、ママ。

「オーストラリア人の英会話の先生と仲良くやってるみたい。授業中もおノロケがすごいんだぁ」

洗面所で歯を磨きながら、わたし。

「付き合いだしてそろそろ3ヶ月だし… これで記録更新だね」

『和子』というのは、わたしのクラス担任の早乙女和子先生の事。

わたしたちの先生で、ママの昔からのお友達。

真面目で優しい先生だけど…

授業中に別れた彼氏の愚痴を聞かせるのは、やめて欲しいって思ってしまうのでした。

「さぁて、そいつぁ…どうかなぁ」

だけど、わたしの話を聞いていたママは、何か思う所があるみたい。

「男と女が別れるポイントってのは、付き合いだして3日、3週間、3ヶ月ってぇ相場が決まってる。今が一番危なっかしい頃合いだよ〜?」

「…そうなの?」

わたしは… 男の子とお付き合いなんてしたことないから、わかんないや。

「そう言えば、先生が今日はクラスに転校生が来るって言ってたよ」

「男? 女?」

「男の子だって」

「どんなヤツよ? やんちゃな感じのフルフェイスのメットと黒いライダージャケットが似合いそうな奴?」

「ママ…」

わたしは軽くため息をつく。
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